YouTubeが可能にした主婦クリエイターの道 英語の料理動画で人気のユーチューバー

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ユーチューバーになるきっかけを作ったのも、夫だった。「この人有名だから、観たら」と、ミシェル・ファン(Michelle Phan)さんの動画(例:Barbie Transformation Tutorialw)を教えてくれたのだ。彼女は自分の顔にメイクをしながらさまざまな独創的なメイク手法を伝える動画で人気を博し、人気ユーチューバーのさきがけとなった人物である。

「初めて観た時に感動して、『このアイデアは使える! この子みたいに料理の動画を作りたい』って思ったんです」

料理とメイクで題材は違えど、視聴者とコミュニケーションを取りながら、楽しくクリエイティブな動画をアップするという表現のスタイルに魅せられたのだ。

ただ、その当時はビデオカメラとMacがあれば手軽に動画が作れるということを知らなかった。大学時代にアニメーション制作の実習があり、1コマを動かすのにものすごく労力をかけた経験があったので、動画を作るなんてとても大変なことだと思っていたのだ。だから、作りたいもののイメージはあったが、「時間がないから」と、なかなか手を付けることができずにいたという。

震災でわかった、本当にやりたいこと

転機が訪れたのは、2011年3月に起きた東日本大震災だ。東京の勤め先で地震を経験した西村さんは事の大きさに衝撃を受け、「この仕事は今やるべきことなのか。積み重ねるならもっと違うこと、本当にやりたいことをするべきでは」と考え、6年いた会社をスパッと辞めた。それからすぐに手探りで動画を作り始め、4月には1本目をアップした。

当時は動画から収入を得られるということも知らず、「貯金があるかぎり思い切りやろう、と考えていた」という西村さん。それくらい「動画を作りたい」という衝動が強かったのだ。

幸い、「貯金が尽きておしまい」という状況にはならなかった。コツコツと動画を作り続け、人気ユーチューバーとなった結果、現在では会社で働いていた時と同程度の収入が得られるようになった。最近では広告費が下がりつつあるので収入が増えることもないが、西村さんとしては満足しているという。一方、YouTubeが「稼げる場」として世間の注目を浴びていることへの不安も感じている。

「YouTubeに収益化の仕組みがあることで、やりたいことを続けられるのはとてもありがたいです。でも、収入目当てでやる人が増えてYouTubeが変わってしまうこと、本当に伝えたいことがあるクリエイターの居場所がなくなってしまうことが心配です」

西村さんも、キャラ弁のような目を引きやすい料理動画を作ったり、視聴者のリクエストに答えたりと、より多くの人に自分を知ってもらうための努力は惜しまないし、それが収益に結び付いている。しかし、動画を作るために収入を得るのと、収入を得るために動画を作るのとは大きく異なる。西村さんは表現者として、これからも日本の普通の料理の素晴らしさを伝える動画を作り続けたいという(例:カブとにんじんのみそ汁)。

自宅で子育てをしながら自立したクリエイターとして活動している西村さんにとって、YouTubeは、世界に向けて自分の表現を問うことのできる、格好の舞台となっている。

やつづか えり フリーランスライター、編集者

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Eri Yatsdsuka

コクヨ、ベネッセコーポレーションに勤務後、2010年にフリーランスに。 2013年に組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブメディア『My Desk and Team』開始。 女性の働き方提案メディア『くらしと仕事』の初代編集長(〜2018年3月)を務め、現在はYahoo!ニュース(個人)他で働き方、組織などをテーマに執筆中。 1児の母。

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