日本のクリエイティブ「独特の強み」の正体 並外れた創造力で「キモノ」を脱ぎ捨てよう

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ブルーカレント・ジャパンの本田哲也社長は、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで「日本のクリエイティブが世界を変える」という演題でスピーチを行った。その内容とは?
広告関連のフェスティバルは数多くあるが、世界最大級の規模を誇るのが「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」。今年は6月21日から27日まで行われた。
日本の広告・PR業界が生み出すクリエイティブは、ここ1~2年で急速に世界の注目を集めるようになっており、23日、ブルーカレント・ジャパンの本田哲也社長が「日本のクリエイティブが世界を変える」という演題でスピーチを行った。
「せっかくの機会なので、日本では暗黙知のようになっているようなことを、英語できちんと表現して伝える準備をした。2カ月ほど準備をした。3つのキーワードを作って説明したところ、『日本の秘密がわかった』というような反応があった。言語化して伝えることの大切さを認識した」
400人ほどの聴衆を前に語ったスピーチとは、どのようなものなのか。その全容をここで掲載する。「日本的」と言われているクリエイティブの秘密について考えるヒントになるかもしれない。
英語の原文はこちらをご覧ください。

 

こんにちは。まず、皆さんに質問をするところから始めさせてください。

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日本は「最もクリエイティブな国」として評価されている

最もクリエイティブな国はどこでしょうか。ここにはさまざまな国籍の方が集まっていますので、どこからいらしたかによるでしょう。

最近のアドビの調査による答えは、日本です。日本は「最もクリエイティブな国」として評価されています。都市レベルでも、東京はニューヨークをおさえて最もクリエイティブな都市とされています。また、皆さんは「モノクル」という雑誌を聞いたことがあるはずです。最近このモノクルは、「世界で最も住みやすい都市」として東京を選びました。

つまり、世界の3分の1が日本はクリエイティブだ、東京はクリエイティブだと言っています。ありがとうございます(笑)しかし実際、日本の人たちはそのように理解してはいません。日本はなぜか自分たちをとても低く評価します。私はこの傾向が2020年までに変わることを願っています。ご存じのように、2020年に東京オリンピックが開催されるわけですが、本当にそうなることを願っています。

新幹線の遅延は平均36秒

東海道新幹線の運行本数は、年間12万本にも上る

しかしとにかく、世界中のほとんどの人たちは、日本がクリエイティブであると認めています。ですが今日のテーマは「なぜか?」です。

なぜなのか、なぜ日本はこれほどクリエイティブなのか。そしてその背景に何があるのか。これが、今日私がお話したい内容です。この講演が終わる頃には、皆さんの日本と日本人に対する認識を少しだけ変えられたらと思います。

新幹線を見たことがあると思います。これは東海道新幹線、世界的に有名な日本の超特急列車で、年間12万本の発車回数を保持しています。想像してください、直感的に、列車1本につき平均延遅時間はどれくらいだと思いますか?――36秒です。

千の利休は不完全な形の茶碗を広めた

つまり、すべては「完璧さ」なのです。完璧こそが日本人と日本が持たれているイメージなのです。これは典型的なイメージの一つですが、ここでの問いは、果たして私たちはいつもそうなのか? ということです。私たちはすべてのことに毎回そのような完璧さを求めるでしょうか?答えはノーです。

これを見てください。これは完璧に見えますか?おそらくそうは見えませんね。約500年前、千の利休という茶道のアートディレクターは、このような茶碗を広めました。これらは、わざと不恰好で不完全な形にデザインされていたのです。

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