具体的には、表示位置より“少し下”が反応するようになっているのだ。iPhoneを手に持って自然な位置で操作した際、快適と感じる反応位置を最適化している。よって、逆さに持って操作すると、いつもと違う反応になるわけだ。
また、英文字を入力するときのキーボードは、ダイナミックに反応位置が変化している。
英文をタイプする際、一般的な文章であれば、EやAなど母音の出現率のほうが高い。また、ある文字を入力したあとに特定の文字が来る可能性も変化する。
例えば、Qという文字の次には、かなりの確率でUが来る。Bの次はEである可能性が高く、Tである可能性はかなり低い。iPhoneの英文字キーボードの反応領域は、次に来る文字の確率に応じて、サイズが瞬時に変わる仕組みになっている。「Guidelin」とタイプすると、eのキーが反応する領域は、最大限にまで広がる。
そのような目には見えない最適化の数々で、iPhoneのキーボードは入力しやすくなっているのだ。
魔法をApple Intelligenceへ
普段われわれが使っているiPhoneや、Macのインターフェースにもさまざまな“魔法のタネ”が仕込まれている。
マジシャンは前口上を述べ、あなたの目の前で「パチン!」と指を鳴らしてみせる。タネを見破ろうとしているあなたは、当然その指の音に注目してしまう。その間に、マジシャンの左手の袖口にスルリとタネであるコインが仕込まれる。
アップルの魔法も原理的には同じだ。例えば画像をクリックして、低解像度の画像が段階的に開いていくアニメーションを見ている裏で、高解像度の画像が準備されている。
もちろん、アニメーションにはどのアイコンの画像が開いたのかを示す役割もある。しかし、同時にユーザーの注意を引いて、待ち時間を感じさせず、処理速度の足りない部分をカバーする役割も担っているのだ。
iPhoneやMacを注意深く観察すると、これらのトランジション(遷移)効果があらゆるところに使われていることに気が付くはずだ。アップルのユーザーインターフェースのガイドラインには「これらの効果を使ってユーザーを退屈させず、魔法のような効果を与えましょう」と、はっきりと書いてあるのだ。
新しいApple Intelligenceでは、生成AIの動作により時間がかかるので、この魔法の効果はより効果を増している。
Siriを呼び出すとiPhoneの画面のフチから内側に向け、虹色の光が脈立つ。この虹色の光は魔法のような雰囲気を与えるとともに、実際にユーザーの注意を惹いて、ユーザーに待っているという意識を与えずに処理時間を稼ぐのである。
例えば、Apple Intelligenceに文章を要約してもらうとしよう。
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