「虎に翼」"振り切りキャラ"で異例ヒットの背景 王道じゃない異色の朝ドラ、なぜウケた?
出身を隠して日本で暮らす外国人もいれば、同性を好きな人もいれば、男装する女性もいれば、年齢差など関係なく接する人もいていい。さらに、妻や母の役割を捨てて自立する人や、母の期待を裏切って母を苦しめた女性を愛してしまう人も。
ヒロイン寅子もまた、仕事を優先し、家事を兄嫁・花江にまかせている、極めて自由なヒロインである。
これまでのヒロインはたとえば、明るくさわやか善意成分多めで、仕事と子育てに迷い、悩みながらなんとかやりとげていくというような理想形があった。だが、そうではないヒロインだって、いていいではないかという問いかけが寅子像である。
寅子は家事や娘の世話をほぼ家族にまかせっぱなしだが、それを誰も責めないし、自身も必要以上に責めない。実際、現実世界には、仕事を優先している妻や母親だっているだろう。
なぜか女性は仕事も結婚も子育ても、自分が求めるからにはすべてに満点を期待されるようなところがあるが、仕事70点、家事30点だっていいではないか。ときにはすべて赤点だっていいではないか。寅子を見ているとそんな気楽な気持ちにさせてくれる。
視聴者は形骸化したものに辟易している
とかくドラマでは、母親は母性の象徴、お父さんは厳格、あるいは逆張りで酒浸りや借金をするダメ人間で、メンターな人物は絶対的に正しくなければならない、というように、固定化された役回りというものを描きがちだが、『虎に翼』はそれがない。
本来なら寅子のメンター的な存在になりそうな人物・穂高(小林薫)は、寅子を女子部法科にいざなったものの、そのあとは、悪気はないながら、ことごとく寅子の意に沿わない助言をして、寅子を憤慨させ続ける。
これまで当たり前に描かれてきた人物像や展開から外れていくことが、社会の価値観を変えていくときに来ている現代と呼応して、絶賛の声が増加していくのだろう。視聴者はこうであらねばいけないという形骸化したものに辟易しているのだ。
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