「虎に翼」"振り切りキャラ"で異例ヒットの背景 王道じゃない異色の朝ドラ、なぜウケた?

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もともと夫に妾がいて、ないがしろにされていた梅子が、弁護士資格をとった暁には離婚して息子の親権をとろうと努力していたことがすべて水泡に帰したにもかかわらず、遺産の相続放棄までして、じつに清々しい顔でこれからの人生に向かっていく。

法律の勉強を諦めてまで子育てを優先したのに報われなかった。妻としても母としてもうまくやれなかったと敗北を認めながら、むしろ爽快な顔をしている梅子。妻にも母にも向いてなかったと認めて開き直るのも悪くないというかのように。

朝ドラでこのような振り切った人物を描いた吉田恵里香が、これまで手がけたドラマにも異色作が多い。

男性が女性の生理に理解を示すオリジナルドラマ『生理のおじさんとその娘』(2023年、NHK)や漫画原作ながら男性同士の恋愛を描いた「チェリまほ」こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年、テレビ東京系)など。ドラマがあまり取り上げずにいた題材を軽やかな感触で、誰もが親しみが持てるように描いてきた。

フィクションでは曖昧にされてきたこと

『虎に翼』は、日本で女性初の裁判官になった三淵嘉子をヒロイン寅子のモデルにしたリーガルエンターテイメントとして、開始早々から、戦後、国民の平等を謳った日本国憲法第14条を登場させ、視聴者の心を震わせた。

このドラマ独特の現象だが、女性問題に興味の強い女性や、法律の仕事に従事している女性たちがSNSでしきりに賛同している。それがドラマの人気を底上げしていることは確かなのである。

男性優位社会で、スンッとした澄まし顔で爪を隠して生きていかざるをえない苦労や、せっかく実力で仕事を得ても結婚や出産によって一時キャリアを諦めないとならなくなる理不尽や、妻や母や仕事やすべてにおいて満点を求められる重責……など、登場人物の体験と心情を自分に重ねて涙してしまう人たちも少なくない。

これらもまた、これまでしっかりと言及されてこなかった現実であり、フィクションでは曖昧にされてきたことをフィクションでこそしっかり描く、その姿勢に支持が集まっているのではないだろうか。

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