最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった
正しさとはなにか。
朝ドラこと連続テレビ小説『虎に翼』(NHK、脚本:吉田恵里香)の最終週の1週前、主人公・寅子(伊藤沙莉)が、反論したことを詫びる若い調査官・音羽(円井わん)に「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」と自分にはなんでも言っていいという懐の大きさを見せた。
これは『虎に翼』の中では珍しいことではない。『虎に翼』ではこの半年間、一貫して、正しくなくてもいい、完璧じゃなくてもいいということを描き続けてきた。
あくまで基準は「自分」
寅子は友人のよね(土居志央梨)に「よねさんはそのまま嫌な感じでいいから」と言っている。そのせいか、よねはいい大人(50代)になっても口が悪く、愛想もない。そもそも、ずっと男装をしている。
男尊女卑の時代、男のような口ぶりかつ男装をしていたせいで司法試験に受からなかったのではないかと思われても、決して自分を曲げることなく、やがて男装のまま司法試験に受かった。自分らしく生きた末の勝利である。
寅子自身が、判事のわりに正しくも完璧でもなく、ちょっと嫌な感じのキャラである。常に誰かの言ったことに「はて?」と口を挟みまくる。
中でも、恩師・穂高(小林薫)に花束を手渡さなかった事件は、多くの視聴者が「はて?」と釈然としない思いにかられた、世の大絶賛を浴びている『虎に翼』のなかで最大の謎であった。
寅子の武勇伝・穂高事件は自分らしさを語るうえで重要である。
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