最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった
生理や更年期や痴呆や性的マイノリティや日本に住む外国人のことなど、ドラマで描くとさまざまな意見が出るため、自主規制して率先して描いてはこなかったこと(吉田曰く「透明化された」)を全部入れるという、『虎に翼』とは、まるで曼荼羅を描くような執念で描いた労作である。
それら1つひとつの掘り下げは、清永聡の取材ものにはかなわず、どうしても浅くなり、そこを物足りなく思う視聴者もいた。けれど、まだ30代。この体験を経て、見識を広め、書くことをやめずに邁進すれば、40代、50代と、どんなものを描くのか期待はある。
少なくとも吉田恵里香は、やりたいことがあっても型にはめられ諦めてしまっていた人たちの希望になった。やりたい意欲のある若い世代にチャンスを与えた、まさに虎に翼を与えたNHKの思いきりのよさがこれからいい方向に作用してほしいものである。
9月25日放送の『クローズアップ現代』でも、「『虎に翼』が描く“生きづらさ”の正体 脚本家・吉田恵里香」を特集。
「物語が描くのは、100年前から現代にも通じる様々な差別や不平等。そして性別や立場に関わらず、多くの人が抱える“生きづらさ”だ」(公式サイトより。原文ママ)として、生きづらさについてドラマで見つめた脚本家に迫り、吉田を時代の寵児のように扱っている。
フワちゃんのような存在
だが、最後にひとつ。筆者も思ったことを言わせてほしい。
朝ドラにおける、寅子のような強気の主人公の誕生には、自由闊達で誰に対しても物怖じせず、歯に衣着せない言動をするフワちゃんのような存在が人気だった時代の流れに支えられていたところもあるように推察する。
ところがフワちゃんは、SNSでの失言により芸能活動の休止に至った。
なんでも思ったことを言う、庶民的で、ラフで型破りなキャラクターを支持する風向きががらりと変わったいま、『虎に翼』がどんなに人気を馳せたとはいえ、今後しばらくは、寅子のような、たとえ嫌な感じでも私は私、というような我が道をゆくキャラが量産されることはないかもしれない。
だが、寅子のような、必要悪といえる強烈な個性をこの社会から消してしまったら、『虎に翼』をやった意味がなくなるだろう。寅子のような主人公が疎外されない社会を望みたい。
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