最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった
それでも寅子は、「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」や「そのまま嫌な感じでいいから」という精神で突き進むのだ。なかなか得がたいキャラクターである。「許さず恨む権利がある」なんてセリフもあった(左遷させられた若き判事の思いの代弁)。
朝ドラに限ったことではないが、物語の主要な人物はたいてい、理にかなっている。世間一般において正しいことを発言し、行い、共感され、支持される。
だが、寅子は違う。弁護士の仕事を得るために契約結婚をしたり、子どもができても子育てに熱心でなく、晩ごはんの代わりにお菓子で済ませたり、職場でキスしたり、再婚の際は事実婚を貫き夫婦別姓を選択したり。世間的に見ていかがなものかと思う視聴者もいる一方で、そういう狡さやゆるさに救われる視聴者もいるのである。
なにごとも「ゆるし」が大事とはいうものの、それは理想論に過ぎず、「許さず恨む権利がある」という主人公はなかなか肝が据わっている。
「はて?」のたびに、実社会での問題が浮かび上がる
契約結婚は、「逃げ恥」(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』)ブームの影響もあってか、令和のいま浸透しているし、夫婦別姓も目下、議論されている注目案件である。子育ても家事も、やってくれる人にやってもらうサービスがビジネスとして成り立っている。
これまでいかがなものかと思われたことが、いや、やってみてもいいのではないか、やってみたら意外といけると、新たな門戸はどんどん開いているのが令和である。
むしろ、これまであまりにも人間を型にはめすぎてきたのではないか。寅子が「はて?」「はて?」と別の視点を提示していくたびに、実社会での問題がくっきりと浮かび上がってくる。だからこそ、これまでの朝ドラは品行方正過ぎて魅力を感じなかったという層にも受けたのだろう。
それこそ、明るく元気でさわやかで良識的な朝ドラヒロインみたいであれ、と型にはめられてきた世の女性たちにとって、そこからはみ出た型破りな寅子はしてやったりなのである。
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