最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった

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詳しく記すと、寅子が妊娠と仕事を両立させようと奮闘していたとき、穂高がいったん子育てに専念したほうがいいと助言。それが寅子を激怒させ、穂高が引退するときまで根に持っていて、彼の送別会で花束を渡す役割を拒否したのである。「納得いかない花束は渡さない」という捨て台詞を吐いて。

虎に翼
さまざまなバトルを繰り広げた穂高と寅子(画像:NHK『虎に翼』公式サイトより)

寅子の言い分としては、仕事を選ぼうと子育てを選ぼうと、どちらを選ぶにしても自分が選択したく、たとえ善意であっても、他者から寅子をさも理解したふうにこうするといいとは言われたくない。

世にいう「傾聴」の大切さを説いたエピソードであり、相談の趣旨とは当人の言いたいことを聞いてもらうことであり、他者の意見を求めていないという、コミュニケーションにおいてつまずきやすい問題を描いた。

寅子の生きる道、それは世間一般の正しさを基準にしないこと。あくまで基準は自分。思ったことは遠慮なく声に出す。

だから、娘・優未(川床明日香)が大学院まで進んだにもかかわらず途中で辞めて、自分探し(雀荘や甘味と寿司の店でバイト)をはじめたことを内心心配しながらも、決して、寅子の意見を押し付けず、じっと黙っているのである。

寅子は、ここまで来たのだから卒業したほうがという夫・航一(岡田将生)の発言を「黙って!」と遮り、「優未の道を、閉ざそうとしないで」「どの道を、どの地獄を進むかあきらめるかは、優未の自由です」と主張する。

航一の意見を「黙って」と封じるのはありなのか、とこれもまた「はて?」ではあるが、寅子の信条は「すべて正しくなければ声をあげてはいけないの?」だと言われたら、ぐうの音も出ない。

主人公はなかなか肝が据わっている

「黙って」と言われてしまった航一をはじめとして、基本的に、男性陣は、寅子たち女性から身体的にも言葉的にも暴力にさらされる。

暴力はよくないという台詞もあるが、股間を蹴ったり、危険な崖のほうへ小突いたり、キックしたり(これは女性から女性へ、だった)、ときに手が出る、口が出る。

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