最終週「虎に翼」異例ヒットとなった"2つの理由" 新鮮でありながら「NHKらしい」見事なドラマだった

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さらに清永は、ドラマ放送中に、『みみより!解説』『午後LIVE ニュースーン』などのニュース解説番組で、これらの用語や事件の解説を行っていた。モデルからかなり逸脱し、令和的な価値観をもって現代人に共感を呼ぶ寅子が、どれだけ自由に暴れまわっても、その背景が史実どおりの事件なものだから、土台が崩壊することがなかったのである。

自由奔放な主人公・寅子のオリジナリティあふれるドラマパートと、現役ジャーナリスト清永聡の取材に基づいた司法パートの組み合わせは、NHKが最近、自局のよさを活かそうとして時々行っている、ドキュメンタリーとドラマの2本立ての番組(『未解決事件』や『NHKスペシャル 南海トラフ巨大地震』など)のアプローチを、朝ドラ流にやってみたという印象を受ける。

史実の事件部分をしっかり描きつつ、それを裁判する人たちの人間臭さをドラマで描き、出来事が自分ごとに思えるように。

新鮮でありながら、NHKらしいドラマ

『虎に翼』は法曹界の物語で、実際に存在する人物をモデルにしているとあれば、法曹界からの評判もいい。明治大学など大学が応援しているのも強いし、SNSでは主に弁護士の方々とフェミニストとリベラル系の政治家や一般の方々が絶賛の声をあげていた。

また、スポーツ紙ではなく、一般紙が率先して『虎に翼』を取り上げていて、世の中、派閥がものを言うことを痛感させられた。

もちろん、こればっかりになると、知的エリート主義が鼻につくばかりで、これまで朝ドラを楽しんできた一般層にそっぽを向かれてしまう。そこを工夫して、型破りな寅子を庶民的な伊藤沙莉が演じることで、うまいことバランスをとったと言えるだろう。

これまでの朝ドラにない新鮮なドラマでありながら、バランスをとった公共放送NHKらしいドラマとも言えるという、『虎に翼』は実に見事な立て付けになっていたのである。

企画の勝利であると同時に、この大胆なプロジェクトに参加して、まさに臆することなく自由に脚本を描いた吉田恵里香という30代半ばの脚本家の、自分の意思を貫いて、真っ向から日本社会とは何なのか、正しさとは何なのか、多少、間違っていても、おかしいと思ったことには声をあげたい、自分らしく生きたいという愚直なまでの信念が風穴を開けた。

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