「らんまん」残り1カ月でも主人公の存在感薄い訳 主人公が何かを成し遂げる作品とは違う魅力
朝ドラこと連続テレビ小説『らんまん』(NHK)が残り1カ月(5週間)、ラストスパートに入った。
実在の植物学者・牧野富太郎をモデルにした主人公・槙野万太郎(神木隆之介)とその妻・寿恵子(浜辺美波)の物語は、日に日に支持者を増やしているが、残り期間が短くなっても、なぜかやや主人公の存在感が薄い。終盤、盛り上がるか、失速するか、ここからが大事である。が、おそらく盛り上がると、朝ドラに関する書籍を2冊書いている筆者は見る。切り札があるからだ。その切り札とは──。
従来の朝ドラには「ゴール」があったが…
『らんまん』の主人公・万太郎は、明治時代、武士の世が終わり、身分制度が廃止され、庶民が活躍する可能性が生まれはじめた頃、高知の商家(造り酒屋)に長男として育った。小学校に入ると学校の勉強がいやで辞めて、以後、ただただ植物への強い好奇心のみに突き動かされ、家業も継がず、学歴社会もなんのその、唯一無二の植物学者になる。
モデルの牧野富太郎も、おおむねそういう人生で、日本中の植物を集めた植物図鑑を作る偉業を成し遂げた。おそらく、ドラマもそこまで描くであろう。
朝ドラを説明するとき、筆者が何度も繰り返し記してきたのは、朝ドラでは、主人公が何かを成し遂げることがゴールに設定されていることが多いということだ。これまで、ウイスキーを作る、インスタントラーメンを作る、「オリンピック・マーチ」を作る、『赤毛のアン』を翻訳する、女学校を作る……等々、視聴者が知っている有名なものを苦心の果てに作り出すドラマが人気だった。
だからこそ、『らんまん』でも万太郎の偉業──図鑑を作る、が待ち望まれている……かと思えば、そこはさほどでもなさそうだ。前述の作品だと、ウイスキーはまだか、ラーメンはまだか、オリンピックはまだか、『赤毛のアン』はまだかと、今か今かと待ち望まれていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら