動物の赤ちゃんの顔「可愛さ」を感じる黄金比とは 赤ちゃんの「愛くるしい姿」は立派な生存戦略だ

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ホッキョクグマ
なぜ、ヒトを含む動物の赤ちゃんの容姿や顔は例外なく大人には可愛いと感じるのだろう(写真:Alexey Seafarer/PIXTA)
海獣学者・獣医として海陸両方のさまざまな哺乳類に触れ、解剖学の知識をもつ田島木綿子氏。
そんな田島氏の新著『クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ』では、動物たちの交尾の驚くべき工夫、妊娠・出産の不思議など、あまり明るみに出ないけれど実はとても面白い、繁殖・生殖の話が多く掲載されています。
同書より一部を抜粋し、3回にわたってお届けします。
第3回は動物の赤ちゃんの愛くるしさについてです。

赤ちゃんの愛くるしさの秘訣

どのような動物の赤ちゃんでも、その容姿や顔を見ると思わず「可愛い!」と声を上げたくなるほど、愛くるしい容姿をしている。なぜこのようにヒトを含む動物の赤ちゃんの容姿や顔は例外なく大人には可愛いと感じるのだろう。

ここにも、子どもの生き残り戦略が隠されている。

赤ちゃんの顔は、まだ顔全体が成長段階にあることもあり、顔の大きさに比べて目や口などのパーツが大きく、中心部に偏っているように見える。さらに両目と唇の中央を線で結ぶとほぼほぼ「逆正三角形」を示す配置になっている。じつはこの黄金比率が「可愛い」という定義を生む。

もちろん、赤ちゃん自身がお母さんのおなかの中にいるときに忖度し、逆正三角形の顔をつくって産まれてくるわけではない。長い進化の過程で、そうした黄金比をもった個体だけが親から可愛がられた結果、生き残りに成功したため、この比率をもった個体が生まれる確率が増え、定着したのだろう。

基本的に生まれたばかりの哺乳類の赤ちゃんは、どんな形であれ親に守ってもらい、母乳という最大の栄養源をもらえるように、いわば媚びなければ生き残ることができない。だから、生まれた瞬間に、親から無条件に「この子を育ててあげたい」「お乳を与えたい」と思われるように、「可愛さ」を武器にする戦略なのである。

この話を初めて知ったとき、「本当だろうか」と思い、じつはいろいろな哺乳類の親子の顔を比較するというちょっとした調査をしてみたところ、確かにどの動物の子どもも、目と口を結ぶ線が“逆正三角形”を構成していた。

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