動物の赤ちゃんの顔「可愛さ」を感じる黄金比とは 赤ちゃんの「愛くるしい姿」は立派な生存戦略だ

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クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ
(イラスト:芦野公平)

見た目が“可愛い”ということに加え、成体に比べて相対的に頭でっかちで手足が短く見える容姿も、「私はまだ完全な個体ではないですよ」「弱い生き物ですよ」というアピールにつながっている。そうすると、外敵に襲われやすくはなるが、周りの大人たちには、本能的に「守らなければいけない」と思わせる効果がある。

北極圏の氷上では無敵の王者であるホッキョクグマも、赤ちゃんの顔は“逆正三角形”の黄金比率にのっとり、無条件にとにかく可愛い。ホッキョクグマは、別名“シロクマ”とも呼ばれ、字のごとく真っ白な体毛をまとい、北極圏の流氷域や周囲の海岸に分布している。大人のオスは体長2メートル以上になり、体重は最大で800キログラム近くに達する。

メスでも大きいものは体重300キログラムを超える。

これに対して、生まれたばかりのホッキョクグマの赤ちゃんは、体重わずか500グラム。人間の赤ちゃんよりもはるかに小さい。加えて、つぶらで真っ黒の瞳と小さな口で、逆正三角形の黄金比をつくれば、その愛くるしさは天下一品となる。

母親は2年以上をかけて、子どもに授乳しながら一緒に過ごし、子育てをまっとうする。

成長にともない、顔や鼻面も縦長になると、左右の目と口を結ぶ線は、「逆二等辺三角形」になる。こうして大人顔になることは、一目で「強いオスだ」「性的に成熟した個体だ」と周囲に識別させることもできるので、これはこれで大人の生き残り作戦となる。

一方、人間社会で可愛がられるイヌやネコなどの愛玩動物の場合、成体になっても逆正三角形の可愛い顔をしている種が多い。こちらは品種改良された賜物で、顔が黄金比率のほうがより飼い主に可愛がってもらえる確率が高く、人気も出る。愛玩動物は同種で戦う必要はなく、ひたすら人間に可愛がられ、癒しの対象となるからそのほうが良いのだろう。

そういわれると、うちの愛猫たちもなんとも理想的な黄金比率ではないか。そうか、知らないうちに私自身もまんまとこの黄金比率の魔の手にかかっていたとは……身をもって知った次第である。

「ニオイ」という戦略

育児に追われて疲れ気味のお母さんも、赤ちゃんを抱っこしたり、添い寝をしたりすると、赤ちゃんから放たれるなんともいえない心地よいニオイがして、幸せな気分になり、疲れも少し緩むのではないだろうか。これも赤ちゃんの戦略の一つのようだ。

哺乳類の赤ちゃんたちは、見た目の可愛らしさだけでなく、ニオイも重要な作戦として使っている。

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