動物の赤ちゃんの顔「可愛さ」を感じる黄金比とは 赤ちゃんの「愛くるしい姿」は立派な生存戦略だ

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赤ちゃんは、母親はもとより、周りの大人たちに可愛がってもらえる独特のニオイを発している。そのニオイを嗅ぐと、母親や周りの大人たちは、脳の中にドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が放出されることが、複数の研究から明らかにされている。

ドーパミンは幸せホルモンなどとも呼ばれることもあり、次のような働きがある。

〇幸せな気持ちになる
〇意欲が向上する
〇集中力が高まる
〇ポジティブな思考になる

実際、赤ちゃんのニオイにより、脳内にドーパミンが増えると、母親は育児の不安や疲れが軽減されるとともに、赤ちゃんへの愛情が高まり、前向きな気持ちで育児を楽しめるようになるという。

私も、甥と姪が小さかった頃、彼らのニオイから多くの元気と活力をもらっていた。

確かに、独特の心地よいニオイが彼らからはするのである。「ゆうちゃん、あれ買って!」といわれれば、ホイホイ買ってしまうダメ伯母で、いつも妹に怒られている。

ニオイと鳴き声で自分の子どもを識別

また、野生下の動物の多くは、子どもが群れている中、自分の子どもをニオイと鳴き声で瞬時に識別することも、よく知られた事実である。

『クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ』(山と渓谷社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

哺乳類がもつ五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち、最も古い感覚は嗅覚といわれている。嗅覚は、大脳辺縁系と呼ばれる本能を司る古皮質と共に、魚類や両生爬虫類でも比較的よく発達し、機能している。最も古い感覚の嗅覚をも戦略に取り入れて母性を誘導するとは、赤ちゃんの生き残り作戦はすごい。

しかし、ここにまた例外がいる。クジラ類である。彼らは脳に他の哺乳類がもつ嗅球(ニオイを司る脳の部分)が存在しない。ということは、基本的にニオイは嗅げない。

そもそも水中生活に適応した彼らにとって、ニオイはあまり重要な感覚ではなくなったようであり、そのため、クジラ類の嗅球は退化したと推測されている。それでも、親子のイルカを見ていると、親は愛情たっぷりに育児をしている様子で、子どもはニオイという戦略がなくとも多くの愛情を注いでもらっている。

ちなみに、赤ちゃんの魔法のニオイは、種差はあるが生後6ヶ月前後で徐々に消失していく。

田島 木綿子 獣医師、国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹、筑波大学大学院生命環境科学研究科准教授、日本獣医生命科学大学獣医学部客員教授、博士(獣医学)

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たじま ゆうこ / Yuko Tajima

1971年生まれ。日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大学)獣医学科卒業。学部時代にカナダのバンクーバーで出合った野生のオルカ(シャチ)に魅了され、海の哺乳類の研究者として生きていくと心に決める。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得後、同研究科の特定研究員を経て、2005 年からアメリカのMarine Mammal Commission の招聘研究員としてテキサス大学医学部とThe Marine Mammal Center に在籍。
2006 年に国立科学博物館動物研究部支援研究員を経て、現職に至る。海の哺乳類のストランディング個体の解剖調査や博物館の標本化作業で日本中を飛び回っている。本書では獣医学の知見を活かして海と陸の哺乳類を対象に繁殖戦略を語り尽くす。著書に『海獣学者、クジラを解剖する。』(山と溪谷社)ほか。

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