「強みを全然見てもらえない」悩む人に欠けた視点 差別化の前に「同質化を考える」べき深いワケ

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差別化の正しいステップは、まず「参照枠(フレーム・オブ・リファレンス)」を考えることから始まります。

参照枠というのは、顧客が頭の中に無意識につくっている、商品やサービスを分類するためのグループです。例えばベンツやBMW、アウディなどは、「高級車」というグループでくくられて顧客の頭の中に入っていたりします。

同じ高価格帯の車でも、国産車のクラウンやスカイラインなどは、これとは微妙に違うグループに入っているのではないでしょうか。

そのグループに意識して別の名前(「国産高級車」など)をつけているかどうかは別として、顧客はこれらの車を、ベンツやBMW、アウディの横並びとしては通常思い浮かべません。例えばクラウンとベンツのCクラスはだいたい同じ価格なのにもかかわらず、です。

差別化というのは、正確にはこの参照枠の中で、参照枠の中の他の商品と自分の商品の差をつくっていく、というアクションなのです。例えば先ほどの「高級車」グループの中で、自社の車とベンツとの差を考えたり、「国産高級車」グループの中でクラウンとの差を考えたりすることです。

狙ったグループに入るために「同質化要素」を考える

おっと失礼。少し先を急ぎすぎました。差別化を語る前に、もう1つ重要なステップについて触れておかなくてはならないのでした。

一度参照枠を決めたら、次に必要なアクションは、その参照枠に入るためのエントリー資格を身につけることです。

ベンツやBMW、アウディと横並びになって「高級車」のグループに入るには、例えば独立した、高級感のあるショールームを用意する必要があります。また、車の内装にはホテルの調度品のような素材のクオリティーが求められますし、一目でそれとわかるアイコニックな外観デザインも必要となってくるでしょう。

こうした要素を「同質化要素」と呼びます。「差別化」と比べると知名度は劣りますが、実はこちらが兄弟で言えばお兄さん的な存在なのです。

日本では2005年に後発として登場したレクサスは、まずこうした「同質化要素」を備えることによって、顧客の頭の中でベンツやBMW、アウディと横並びで思い出される「高級車」ブランドとなりました。

レクサスが誇る静粛性や、高級旅館さながらのおもてなしなどといった「差別化要素」は、この状態になってはじめてその真価を発揮します。「顧客の頭の中にある高級車グループ」という土俵に上がれていなければ、そもそもフォーカスしている顧客に比較されることがないので、いくら他の商品との差を考えてもあまり意味がない、ということになってしまうのです。

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