筆者は、「古い店舗や建物が消える」と聞いて毎年のように様子を見に通っているが、コロナ後はマイナス金利効果が効きすぎて開発が止まらなくなっているようだ。
「都市の魅力を集積させ、都市間競争を勝ち抜く」という一見美しいシナリオには、「タワマン系住民を増やし、市の財政を豊かにしたい」という本音がいつも隠れている。
乗降客や駅前来訪者(駐車台数)、大規模店舗の売上高などが総崩れの中、人口増のため、市はマンション誘致で税収増を図ったが、そのハードルをクリアするためには、「昔ながらの面影を残す商店街」を高級化させるしかなかった。
「駅近・新宿まで25分」を売り物にしているが、そのマンションの間隔は狭く、雨後のタケノコのような状況になりそうだ。
今後、府中が「レッドカード」をもらうか「MVP」となるかは、新住民、不動産業者、旧住民の中で見方(味方も)が分かれそうだ。
杉並にも「行政による再開発」の魔の手が…
一方、再開発が進むのがJR中央線の中野駅周辺エリアだが、それが西隣の杉並区まで及ぶと、どうなるだろうか。
杉並区が誇る、高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪という、戦後長年かけて成熟した古い街並みと文化が、再開発で変質する恐れがある。これまで培ってきた「杉並らしさ」を毀損しかねないのだ。
古着店など、中央線文化を象徴する高円寺では、商店街やその住民が商店街を分断する道路の新設にかつて反対し撤退したが、計画そのものは残っている。
隣の文士の街の阿佐ヶ谷では、改革派区長が前区長の再開発計画を実行に移そうとしている。
行政に「商店街を守る人情」はあるのだろうか。
「人口が増えれば、税収が増えて、自治体はラクになる」という短絡的な発想の首長は多く、その手段として自治体が仕切れる再開発に頼りがちだ。
再開発事業に「街としての多様性や潤い」を求めるのは限界がある。
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