中国の「中南海」では何が行われているのか 広さディズニー2個分、知られざる権力の中枢
過去にも、東風汽車総経理を歴任した苗圩が本社所在地のある湖北省武漢市書記を勤めた例がある。苗圩はその後、自動車産業を所管の一つとする工業信息化部の部長(中央委員)に就任し、今日に至っている。
スキャンダル後の石油業界はどうなったか
スキャンダルにまみれた石油業界の人事刷新が顕著である。石油業界の中心である中国石油天然ガス、中国海洋石油、中国石油化工集団(以上が三大石油集団)の、いずれも、前任者の定年や転任に伴う“横滑り”ないし昇格人事であるが、同時に汚職・腐敗による逮捕者(中国石油化工は王天普副董事長が逮捕)を出している。その刷新人事という意味合いもある。しかし、石油業界では、業界内の異動、内部昇格という人事パターン(「制度性」)が主であり、所管官庁や当該地方行政担当からの就任ケースは少ない。
非鉄・建築で異例の昇格を遂げた何文波、官慶
非鉄金属大手の中国五鉱集団、建築大手の中国建築工程公司も業界内異動が一般的であるが、五鉱集団の何文波(かぶんは)は2014年8月に宝鋼集団から異動してきたばかりであり、1年以内の昇格は異例である。前任の周中枢(1952年生)も同じく2014年8月の就任であり、定年(63歳ではあるが)とはいえ、企業では、「1951ないし52年生」が一斉に“定年”に追い込まれている。
中国建築工程公司の官慶は今回の企業人事の中で、最も若い(1964年生)董事長となる。内部昇格ではあるが、党の人事部である中央組織部と大手中央国有企業を所管とする国有資産管理委員会が進める中央人事改革の一環として始めた内外公募制に基づく12名のなかからの抜擢という。「制度性」人事の典型的な事例である。
官慶は湖南大学土木系卒、中国建築西南設計研究院院長を歴任した建築専門家であり、最近の企業人事もその分野の専門家が企業のトップに就任する傾向にある。
2017年に中南海入りする企業代表は誰か
国有企業の人事は中央(組織部)の決定事項であるが、実際の人事は基本的に内部昇格のケースが多い。先に見たように、企業から党・政府への異動は少なくないが、党・政府官僚から企業のトップへの就任のケースは少ないといえよう。企業経営の専門家あるいは、その業態の専門性がリーダーの条件の一つであるからである。しかし、中には、「政治性」人事もある。今回の自動車業界のトップ人事もその一つであろう。
企業人事も2017年党大会をにらんだ人事である。2007年の党大会では、企業界から中央委員1名、中央候補委員23名が選出された。2012年の18回大会では、中央委員は7名、中央候補委員は19名となり、業界も多様化した。17期の中央委員は核工業のみ、候補委員は鉄鋼、石油、家電などであったが、18期の中央委員は、石油航空、宇宙工業、銀行などに拡大した。
候補委員は、エネルギー、電力、通信、航空、鉄鋼、電子、銀行など、より幅広い業界から選出されている。2017年の19回党大会(19期)では、どの業界から中央委員が選出されるか、企業代表として「中南海入り」する人物は誰か、党大会における企業代表も中国の産業の栄枯盛衰を物語っている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら