中国主導のインフラ銀行に無理に参加するな 「バスに乗り遅れるな」は、本当に正しいのか

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中国主導のアジアインフラ投資銀行は成功するのか。日本は浮き足立ってはいけない(写真は2014年10月、代表撮影/ロイター/アフロ)

中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への日本の参加をめぐって、議論がかまびすしい。3月末で創設メンバーとなるための申請は締め切られ、6月末が参加の最終期限の見通しだが、ここへ来て欧州諸国や豪州が参加を表明したため、「中国の外交の勝利だ」「日本はいったいどうするんだ」などと浮足立った反応も目立つ。今回は、レアメタルビジネスで中国と渡り合ってきた国際ビジネスマンの立場から、ひとこと言わせていただきたい。

中国は本当に「公正な運営」ができるのか

「本当の中国」「本当の中国人の考え方」がわかる一冊。「日本と中国とはうまくつきあえる」というのが筆者の持論だ

AIIBは、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に、中国が対抗して創設する金融機関だ。中国が今回、「世界のルール」をわざと無視して、金融分野での「支配」を強化しようとしているのかどうかは不明だが、私に言わせれば、AIIBについては、「中国的な運用」をしていれば、いずれ行き詰まることが予見される。

現在、日本と中国は、この6月、約3年2か月ぶりに開かれるとされる日中財務対話の中でAIIBについても話し合うとされている。

その前に日米首脳会談もある。だが、もしAIIBに日本が出資したとして、運用に際して何の権利もなく責任と義務だけを押しつけられるのなら、日本は無理をせず「外部から見ているだけ」の方が賢明だ。国連の安全保障理事会で日本が常任理事国でないことと少し似ているが、あまり無理する必要はないと私は考える。

では、なぜ「無理はしない方がいい」と言えるのだろうか。ひとことで言うと、私は、レアメタル市場を通じて中国の政策や外交面での傲慢な対応を見てきたからだ。断っておくが、私は30年余にわたり「中国ビジネス」をしているわけで、中国の良いところも悪いところも、それなりに知っているつもりだ。

そのうえで言わせてもらうと、中国の「無定見」な進め方や、その方法論のメカニズムについて、日本だけでなく、他の世界もまだまだ理解できていない。そのことに、私は常々危惧を感じてきた。この連載でも、「中国バブル崩壊は、レアメタル暴落が引き金に?」などで、折に触れて指摘してきたところだ。

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