いよいよ11月10日から、北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が始まる。この時期にいつも気になるのは北京の大気汚染である。北京市内では11月に入って、一時、大気汚染物質「PM2.5(微小粒子状物質)」の大気中濃度が世界保健機関(WHO)の指針の約16倍に上昇した。
北京の環境は、いわば「張子の虎」である
PM2.5で問題になるのは人的な健康被害で、ぜんそくや肺気腫や肺がんなどの呼吸器疾患、血栓や心臓病などへの影響が懸念されている。PM2.5は粒子が小さいので重力の影響を受けにくく、上昇気流に乗って大気中に拡散していくから、韓国や北九州などにも被害は及んでいる。去る10月19日に行われた北京マラソン2014では、マスクをして出走したり、途中で棄権するランナーが続出した。
さて、APECには安倍首相やオバマ米大統領、プーチン・ロシア大統領などが出席する予定だが、中国当局は会議開催期間中の近隣工場の操業停止を決定しているので、この期間だけは少しは、北京の青空が見えているはずだ。北京を含む中国北部は、石炭暖房のシーズンに入りつつあるが、当局はAPEC期間中の大気汚染緩和を「最優先」として、「万難を排して」取り組まねばならないと言っている。交通制限も同時に実行され、テロ防止も含めて厳戒態勢を敷いている。
もちろん、環境問題は重要な会議の期間中さえクリアすれば良いというものではない。常日頃からのサステナブルな対策が重要だ。中国で使用されるエネルギーは石炭が中心だから国の全土で石炭のばい煙やSOX(硫黄酸化物)NOX(窒素酸化物)などの排気ガスが拡散され、なかなか抜本的な対策は打てていないようだ。PM2.5対策についてもやはり抜本的に改善される兆しはない。
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