中国主導のインフラ銀行に無理に参加するな 「バスに乗り遅れるな」は、本当に正しいのか

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私は金融の専門家ではないので、深くは立ち入らないが、そもそも中国の金融システムは進化してきているとはいっても、まだまだ未熟で国際的金融システムのレベルに達しているとはお世辞にも言えない。金利の完全自由化さえ、まだの国である。本当に単独でAIIBの運営ができるか、といったら、かなり無理があると考えるのが自然ではないか。そもそも国際インフラ投資に関わる金融機関は、世界銀行と、欧州復興開発銀行、そしてアジア開発銀行(ADB)があれば、わざわざ今回のようなアジアインフラ投資銀行がなくても、困るらないだろうと私は見ている。

いざ銀行が動きはじめたら、傍若無人になる?

私は一連の「AIIBのドタバタ劇」をみていて、レアメタルの中国雲南省にある「泛亜(ファンヤ)有色金属取引所」の運用の失敗と同様になるのではないか、と危惧している。

専門的な話は割愛するが、中国はレアメタル市場の国際ルールを無視して雲南省の同市場を利用して、レアメタルの国際価格を支配しようとした。結果は、インジウムというレアメタルが大暴落し、国際市場は大混乱に陥った。

確かに、中国はレアメタル大国で32種類ものレアメタル元素で最大の生産を誇る。だが、市場の価格は、正常な需給バランスで決定されるべきである。それなのに、中国では、政府が市場に介入したりするのは日常的であるため、市場に秩序を求めるのは不可能と言っても過言ではない。

暴落にみまわれたくだんの雲南省のレアメタル市場は現在閉鎖している。だが、何と新たに福建省の廈門に、似たようなレアメタル市場を開設するというニュースが入ってきて、海外は唖然としている。わかりやすく言うと、投機や価格操作がうまく行かなければ、場所を変え、ローカルルールも変えて、別の賭場を開帳するような話である。

この無秩序ぶりは、中国独特の論理である。彼らは「悪意はない」、とうそぶいている。もちろん、いま挙げた「商品市場の話」と、今回のAIIBの運営とは別ものである。だが、中国は、時として自分勝手で「国際的ルール」に馴染まないことを押し付けてくるということを私はいいたいのだ。そのことをあらかじめ理解しておかないと、大変なことになる。WTO違反がその良い例であるが、中国のルール違反は、全て確信犯であるから、タチが悪いのである。

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