世界の経済はアジア圏(中国やASEANなど)が主導して行く中で、アメリカの影響力は相対的に薄れている。アメリカが欧州などと共同で現在ロシアに経済制裁をしているのは、中国が力をつけて、その上ロシアも力をつけてくることに焦りを感じているからだと私は考える。
ウクライナをけしかけて紛争状態にしてもメリットはないが、クリミア問題を持ち出してロシアを孤立させようと考えるのはアメリカが焦っている証拠ではないか。いずれにしても、今後は世界のバランスが政治的にも経済的にも不安定になる可能性が極めて高い。
下手に中国が動けば、大損をしかねない
日本は、中国とアメリカとロシアの闘いを冷静な立場で観察し、今は下手に動かないことがいちばん良いのではないかと考える次第だ。現在のところ、麻生太郎財務相も「公平なガバナンスの確保を(言い訳に態度を)留保すべき」との見解を表明しているが、これは国益に資すると考える。
ましてや日本からの問題提起を無視している中国の態度を見直させるためにも、今は下手に動かないのが最良の策ではないか。
日本と米国が主導するADBは67カ国が加盟している。一方、AIIBは今や50カ国以上が参加を表明している。日本としては、ADBがあるのだから、何もAIIBを積極的に後押しする必要もない。通常の国際金融機関のルールを理解できているかどうか怪しい中国にはくみせず、アメリカとの議論を戦わせれば良いだけの話である。
もう一度最後に繰り返すが、中国は不安定であることが当たり前なので、今回のAIIBのよう取り組みは、先進国には馴染まない。しかも、市場経済と社会主義経済は矛盾しているはずだが、中国では「良い所取り」である。下手に中国が動くと、今度はそのツケは中国国内だけには止まらないということになる。
最も怖いのは、AIIBの運用に関して、中国のトップが政治的な枠組みをもってインフラ投資に口出しをし始めた時である。国際ルールが適用されるか不透明なまま、なし崩しに採算度外視で融資が決定されたらどうなるのか。
金融のプロに言わせれば現在の中国は約4兆ドル(約480兆円)の外貨準備があるとされるが、5年後には2兆ドル(約240兆円)の外貨が流出するとの予測さえあるくらいだ。今のままなら、単独ではAIIBの運営などできないと考えるほうが自然ではないか。
とすると、結局は中国の外貨の流出リスクを補完してくれる国家は、アジアでは日本以外にはないと言っても過言ではないから、中国は今後も日本の加盟をあの手この手で求めてくることは確実だと私は思う。AIIBについては、引き続き今後の中国の出方を注目して行きたい。
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