中国の「中南海」では何が行われているのか 広さディズニー2個分、知られざる権力の中枢

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会談する米国のルー財務長官と李克強首相。中南海は、中国人でもほとんどの人が知らない「政治の中枢」だ(代表撮影/ロイター/アフロ)
中国株バブルが崩壊、習近平政権の舵取りに大きな注目が集まっているが、実は意外に知られていないのが中南海という場所だ。北京の故宮の西側に隣接する、共産党と政府の本拠であり、文字通り同国の中枢なのだが、表向きは地図さえない。いったい中南海とはどんなところなのか。またそこで繰り広げられる党政治や民間も含めた人事とは?このほど「中南海」(岩波書店)を著した稲垣清氏(在香港中国研究者、元三菱総合研究所香港支社長)に中南海の一つの見方について、寄稿してもらった。

人事の“タテ・ヨコ・ナナメ”と「3つの同」とは?

「中南海研究」のひとつは人事研究である。中南海で繰り広げられる権力闘争の背景を探るうえでも、人事研究が欠かせない。

筆者は中国要人400人の人事データファイルを毎回更新している。失脚者、物故者、引退した人物もしばらくはそのままにしておく。なぜなら異動の背景を視るうえで、必要だからである。

そして、その人事分析の方法は、“タテ、ヨコ、ナナメ”に視ることである。“タテ”とは、個々のリーダーの個人経歴を徹底的に調べることである。公式履歴に加え、家族構成から趣味にいたるまで、とくに後者が大事であるが、簡単にはわからない。そのため、“ヨコ”の研究、すなわち、「同郷、同窓、同僚」(「3つの同」)が必要となる。対象者の同郷(出身地)、同窓(出身学校—できれば中学まで)、同僚(経歴の職場の上司・部下)などを知ることで、人物評価の拡がりと人脈が分かる。

“ナナメ”という見方はやや複雑である。「三つの同」を通じて、その人物が中央トップリーダーと関係があるかどうかを推量することである。例えば、幹部候補学校である中央党校研修は幹部のキャリアコースであるが、そのコースに参加した時の校長(政治局常務委員)は誰か、副校長は誰か、そして同じコースでの参加者は誰かなどを視ることである。あるいは、有望な幹部候補生は米国ハーバード大学の短期研修に参加できるが、その研修メンバー(“同窓会”)が誰であったかを視ることも重要である。

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