2024年度入試から女子枠を設置した東工大。思い切った改革に踏み切る狙い。
労働力不足の中、「女性活躍」が叫ばれて久しい。多くの企業が施策を打つが、効果を出す先進企業と変われぬ後進企業との差は開く一方だ。
『週刊東洋経済』5月18日号の第1特集は「女性を伸ばす会社、潰す会社」。真に女性を活かすための処方箋とは。
高校卒業後、2人に1人の女子学生が大学へ進む時代だが、学科別に見ると、「理学」分野における女子学生の割合は28%、「工学」においては16%しかいない(文科省調査)。
世界的な調査でも、日本で大学進学にあたって工学や製造、建築を志す人のうち女性の割合は16%(2019年)で、OECD加盟国の中で最も低い、と指摘されている。
この偏りを解消しようと2022年、政府の教育未来創造会議の提言に、「理工系等を専攻する女性の増加」が「目指したい人材育成」の一つとして掲げられた。そのような流れの中で各大学が打ち出し始めたのが、女性志願者に限定して選抜する「女子枠」の設置だ。
「女子枠」を設ける大学はこれまでもあったが、政府の方針を受けて2024年度入試では40大学で計約700人の枠が設けられ(山田進太郎D&I財団調べ)、京都大学や大阪大学も2026年度入試からの導入を発表した。
2024年度入試から女子枠を設け、とくに踏み込んだ取り組みをしているのが東京工業大学だ。改革を進める井村順一理事 ・副学長(教育担当)に話を聞いた。
※女子枠入試に関する記事は【コチラ】
2000年代から横ばいの女子比率
ーー女子枠設置に至った経緯を教えてください。
本学の学士課程における2023年度の女子学生比率は13.1%だった。これまでも、女子学生を増やすための取り組みには力を入れ、模擬授業や女性の先輩から話を聞くイベントを実施したり、オープンキャンパスで女子高生対象の企画を実施したりと、さまざまな手を尽くしてきた。
それでも、本学における女子学生の比率は2000年からほとんど横ばいだ。どれだけ頑張っても頭打ち状態であることを考えると、いわゆる「ポジティブアクション」(不利益を被っている人に特別な機会を与えることで、機会均等を実現する措置)に舵を切らないといけないのではないか。益一哉学長がそう考え、決断したのが女子枠の導入だ。
2018年に益学長が就任した際、策定したのが「東工大コミットメント2018」。この1つに掲げられたのが「多様性と寛容」で、女子学生を増やす施策についても検討が始まった。
まずは分析から進め、先行して女子枠を導入している名古屋工業大学など、他大学の事例も参考にして丁寧に検討してきた。その過程で、実感したのは、全国的なムーブメントにならなければ、理工系学部で学ぶ女子学生は定着しない、ということだ。
そうであれば、本学としてはインパクトのある形で実施しなければいけない、と大規模な女子枠導入を決断したわけだ。一方で、非常にセンシティブなアクションであり、慎重に進めてきた。
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