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「東京女子医科大」どん底からの再生は可能か 新理事長と学長が単独インタビューに応じる

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取材に応える東京女子医科大学の清水治理事長(左)と山中寿学長(右) (撮影:岩澤倫彦事務所)
1月13日、東京女子医科大学(東京・新宿区)の元理事長・岩本絹子容疑者(78)が、警視庁捜査二課に背任容疑で逮捕された。一級建築士の男に、業務の実態がないのに新校舎建築のアドバイザー報酬を払い、約1億2000万円の損害を女子医大に与えた疑いである。

かつて名門大学病院として知られた女子医大は、「女帝」と学内で恐れられた岩本容疑者の乱脈経営とコロナ禍が重なって患者数が激減。不適切な経営判断によって医師や看護師が大量に退職し、診療現場に混乱が続く。

新体制の舵取りを任された清水治理事長と山中寿学長が、元理事長の逮捕後に初めてメディアの単独インタビューに応じ、女子医大が直面する現実と名門復活に向けたシナリオを語った。

創業家の呪縛を解いた元理事長の逮捕

2024年12月、女子医大の経営トップに就任した清水治理事長(71)は、旧大蔵省主税局総務課長や内閣府審議官など要職を歴任。2024年3月まで早稲田大学大学院教授を務めていた。弁護士資格を持つ。

山中寿学長(70)は三重大学医学部を卒業、1983年に女子医大の附属リウマチ痛風センターに入職して、2003年から2019年まで教授を務めた。学長就任は2024年10月、任期は2025年6月まで。

2人はいずれも岩本容疑者との接点がなく、これまでの実績から女子医大の再建を託された。元大蔵官僚の清水理事長が経営全般とコンプライアンスなどを担当。36年間にわたって女子医大に在籍した山中学長が、診療・教育・研究の改革を主導する。

インタビューは、岩本容疑者が逮捕された3日後に女子医大の会議室で行われた。まず元理事長逮捕についての本音を尋ねると──

清水理事長ついに警察の捜査で、背任容疑が固まったということですね。女子医大が新しく生まれ変わるには、社会の信頼を得ていかなければなりませんが、この事件によって再び厳しい目が向けられる。それを私たちは受け止めなければならない。逮捕当日は記者会見を開いて、現経営陣として謝罪しました。

山中学長創業家との決別という意味では、岩本容疑者の逮捕は悪いことではないと思います。新体制の女子医大が、警視庁に情報提供など最大限の協力をしているのも、できるだけ早く全貌を解明していただくことによって女子医大が本当に脱皮できる、と思うからです。

岩本容疑者は女子医大を卒業後、自ら経営する産婦人科クリニックで診療に当たっており、大学での研究や教育の実績はほとんどない。いわゆる町医者の岩本容疑者が理事長になれたのは、創立者・吉岡彌生(やよい)の血族だったからだ。今回の逮捕で、女子医大の世襲制に終止符を打つという。

内部告発で懲戒解雇された職員の処遇 

女子医大を舞台にした巨額の不正事件には、内部告発が重要な役割を果たしている。

2022年3月、女子医大職員の2人が筆者に内部告発を行い、翌月21日発売の「週刊文春」で、岩本容疑者の「疑惑のカネ」報道が実現した。

文春報道の1週間後、女子医大は2人を「情報漏洩」を理由に、懲戒解雇する。身分回復を求めて2人が東京地裁に提訴すると、女子医大は2人に2750万円の損害賠償を求め反訴した。組織力と資金力を使った強権的な姿勢に、2人は恐怖を感じたという。

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