「若者はかわいそう論」のウソ 海老原嗣生著


ただデータの種類は多く、そのデータが何を指しているのかははっきりわからないことが多い。誰かが「こうだ」とデータを挙げて見解を発表すると、根拠になったデータを検証する人はまずいないだろう。海老原氏だから間違いに気づいたのだと思う。

本書は第1章、第2章で「若者はかわいそう論」という風説と「怪しいデータ」を反証し、第3章では3人との対談。データ分析はパズルを解く現場を見ているような面白さがあるが、海老原氏の考えの全体像はなかなか見えてこない。早く海老原氏の眼目に触れたいなら、第4章「問題の本丸は何か?」から読み始めるとよい。

「日本を取り巻く状況には、大きな地殻変動が長期間にわたって起きている」とし、「若者はかわいそう論」は、その一端をとらえた扇情的な主張とコマーシャリズムがコラボした言説であり、本質をとらえていない、と言う。地殻変動とは何か?

(1)1985~95年の10年間にわたって起きた、為替レートのありえないほどの変化
(2)85年から連綿と続く大学進学率の急上昇
(3)80年以降、急低下した出生率
の3つだけ。たったこれだけの地殻変動が人・企業・社会に大きな影響を与えてしまった。

3つの地殻変動が引き起こした問題は7つある。

〈今起きている問題〉
(1)円高→国内産業の衰退→国内製造業を中心とした不安定な非正規社員の増加
(2)3次産業の拡大→自営業の衰退→対人折衝業務・大組織での雇用の増加→引きこもりの増加
(3)ベビーブーム→大学増加→少子化→大学進学率アップ施策(無試験化)→大学増設継続→大学生余り・大学生の学力低下→就職氷河期
(4)大卒比率アップ→非ホワイトカラー職への志望者の減少、人手不足
(5)大卒比率アップ→ホワイトカラーでも中堅・中小企業は不人気で、人手不足は深刻化

〈今後起きる問題〉
(6)人口減少→国内消費の減少→内需産業の長期マイナス成長
(7)つくりすぎた大学の破綻
と著者は整理している。「→」で示す因果関係が読み取れない人は海老原氏の著作を読んでもらいたい。

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