Honda Cars茨城南は、15店を束ねるホンダの販売会社。220名の社員中、営業は69名。1カ月の販売台数は、全国の営業の平均が4.8台なのに対し、同社は6.0台。業界全体を見渡しても、健闘している一社です。
その店舗のひとつが、土田さんの在籍する石岡正上内(いしおかしょうじょううち)店です。自動車のディーラーといえば国道沿いにあり、土日は来場者で賑わうイメージですが、こちらは車通りの少ない路地に面した立地。取材中も来客者はゼロ。店内は閑散としていました。
通常ディーラーでは、新規飛び込み客の購入が販売台数の6割を占めると言います。それが石岡正上内店の場合、「1カ月にゼロ」という月も珍しくないといいます。ディーラーとしては致命的……と思われるかもしれませんが、石岡正上内店の「勝ちパターン」は、そんな逆境があってこそ生まれたものなのです。
経理担当だった普通の主婦が自動車営業に?
Honda Cars茨城南の取締役営業部長の福田敏彦さんは、そんな石岡正上内店の立地悪条件に加え、少子高齢化、自動車離れ、将来的な増税(10%)といった市場環境の変化から、新規来店顧客に頼りすぎる運営に限界を感じ、むしろ既存顧客に働きかける必要を感じていたと言います。
なかでも「車検の獲得」営業は、他社からの切り替え需要の獲得や、代替えの需要を喚起できる大切な取り組み。そう強く考えていましたが、当時はまだ具体的に着手できていない状況でした。
5年前、石岡正上内店に異動してきたのが、土田麻理子さん。現在は39歳で、10歳と5歳になる2人の女の子を持つワーキングマザーである彼女は、おとなしく控えめな性格の、いわゆる「普通の女性」。ですが、社内のロープレ大会で1位を獲得するなど、積極性や粘り強さを持つ人でした。
そんな土田さんに可能性を見出した福田さんは、当時まだ業務職(経理担当)だった彼女に、手つかずだった車検の獲得営業を託したのです。
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