「ステージ4」膵臓がん患者が沖縄に"旅立つ"心境 旅先で最期を迎えることになるかもしれない

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愛里さんはこう語る。

「父には、1秒1秒が大切な旅の行程です。とにかく、すべての瞬間を楽しもうと、心に決めていました」

そして、もうひとつ、家族全員が共有していた思いがある。それは「とことんまでお父さんに寄り添う」だった。

床ずれを防ぐために、姿勢を微調整する

「移動は車いすです。完全リクライニングが可能な車いすなので、車いすに乗ったまま体を伸ばして休むこともできます。ただ、ずっと同じ姿勢だと、尾てい骨にできてる床ずれが圧迫されて痛みます。それを防ぐために、いろんな形のクッションを当てて、姿勢を微調整するんです」(愛里さん)

本人が楽になれる姿勢を探りながら、脇の下、腰の裏、首の後などにクッションを挟み込む。

「でも、うまく位置が決まらないときがあります。父は『ちょっと違う。もっと右』とか、わりと注文が厳しいんですよ(笑)。何度も何度もダメ出しをもらって、心の中ではため息をつくこともありました。

でも、父は自分で動けないから私たちに頼るしかないんですよね。そんな私たちに少しでも嫌な顔されたらあきらめてしまうかもしれない。それが嫌でそんな表情は絶対に表には出さずに、OKが出るまで続けました」(愛里さん)

既述の通り、愛里さんは妊娠6カ月の体だ。それでも、「旅の間はパパが最優先」の姿勢を貫いた。(後編に続く)

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末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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