ツアーナースと臨床ナースの違い
東京駅に到着した一行は、浅草近くのホテルに移動し、それぞれの部屋にチェックインした。この日は移動だけで一日が過ぎた。夕食までの数時間は自由行動だが、吉田兄弟はホテルの中で過ごした。夕食はビュッフェスタイルだ。それぞれが好きなものを取って食べるのだが、アレルギーの問題を抱えた生徒も少なくない。
「食物アレルギーは、摂取状況によっては命に関わる事態につながりかねません。かといって、ツアーナースがすべての生徒の食事の状況をその場で把握するのは不可能です。食物アレルギーを持っている生徒は、事前に学校側と保護者の間で綿密に打ち合わせを重ね、どうしても必要な場合は、保護者がその子専用のお弁当を持たせたり、ホテルに特別に発注したりすることもあります」(馬場看護師)
ここで少しだけ、ツアーナースと一般的な医療現場で働くナースの違いを見ていく。
ツアーナースは医療従事者であり、サービス提供者でもある。どちらのスキルが抜け落ちても成立しない。ツアーの主役はもちろん旅行客だ。そこに、旅行会社の添乗員や、修学旅行であれば学校関係者など、さまざまな肩書を持つ人たちが参加している。ツアーナースから見ると、これらすべてが「お客様」だ。つまり、ツアーの最中、ナースは常に客前に立たされることになる。粗相は許されないのだ。
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