肺に障害がある双子の兄
吉田貴明と文哉(どちらも仮名)は中学3年生。2人は一卵性の双子兄弟だ。兄の貴明は、生まれつき肺に障害があり、具合のよくない日は、一日中ベッドで過ごすこともあった。兄弟は仲がよく、弟の文哉は兄のことを、それとなくだが、いつも見守っていた。登下校はいつもいっしょで、文哉は貴明がいることで、充実した学校生活を送ることができていた。2人は学業の成績もよく、3年生に進級すると、名門と言われる地域の公立高校への進学を目指して、お互いに切磋琢磨する日々が始まった。
ただ、2人には中学3年生だからこその悩みがあった。
「なぁ貴明、お前、修学旅行はどうする」
「そりゃ行きたいよ、ディズニーランドだぜ。俺だってスプラッシュマウンテンに乗りたいよ」
2人の自宅は岐阜県だ。小学校の修学旅行は隣の愛知県で、犬山城と明治村を回るコースだった。家族旅行でも行ったことがある場所だし、万が一何かあった場合でも、両親がすぐに駆けつけられる距離だ。しかし、中学校の修学旅行は東京都の浅草と千葉県のディズニーランドを巡る2泊3日の行程である。自宅から離れていることもあり、不安は大きかった。
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