納得の「サプライズ社長人事」映すドコモの現在地 新体制下で「iモード時代の復活」期待する声も

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ふたを開けてみると、今回の人事には納得感が広がった反面、現社長の井伊氏から一回り若返る世代交代となるだけに、グループ内外では驚きの声も上がった。

もともと関係者の間では、国際事業や財務を統括する栗山浩樹副社長(62)を次期社長と本命視する向きがあった。総務省の関係者は「如才なく、発信力にも優れている栗山氏が社長になるとの予想が多かった。思い切った人事だ」と話す。

栗山氏は持ち株の新ビジネス推進室長を経て、2020年にコム副社長、2022年6月に前田氏と同じタイミングでドコモの副社長に就任。経歴と年齢面から、栗山氏の社長昇格が「順当にいけば既定路線」(NTT関係者)との下馬評も高かった。しかし今回の人事で、栗山氏は7月にドコモが新設する海外事業統括会社のトップに就くことが決まった。

持ち株会社で中枢を歩んできた栗山氏ではなく、前田氏が社長に就任することは、3年半ぶりにドコモ出身者がトップへと復帰することも意味する。ドコモ関係者は、「コンテンツを中心に勢いがあったiモード時代のドコモに、再び近づくのかもしれない」と期待する。

改革の裏で溜まっていた“不満”

現・井伊社長はNTT東日本での勤務経験が長く、持ち株会社の副社長を経て、2020年に澤田会長(当時社長)の懐刀としてドコモに送り込まれた。同12月、持ち株による完全子会社化のタイミングで社長に就くと、コム、NTTコムウェアの事業会社2社を子会社化し、グループのシナジー発揮に向けた大規模な組織再編に着手。カンパニー制導入、ドコモショップ統廃合などと、実務面で大ナタをふるってきた。

ただ、思い切った改革を進めた分、内部の不満も生む結果となった。「もともとドコモは持ち株から独立心の強い会社だったが、完全子会社化され、外から来た井伊社長がトップになった。ドコモが変わることを残念に思うプロパーは多かった」(先述のドコモ関係者)。

もっとも、ドコモ出身者ではない井伊氏だからこそ、憎まれ役を買いながら持ち株会社主導の抜本的再編を実現できたとの見方もできる。

井伊氏は会見で、「経営は、現状変革だ。変革すると必ず批判を受け、反対意見を受ける」と述べたうえで、「前田さんはそういったことに臆することなく、信念を持って貫き通せる」と語った。改革を進めてきた井伊氏の実感がこもった言葉だろう。

ドコモグループの再編後の状況については、「井伊氏の時代にフォーメーションや組織の形は変わったものの、中身がまだ伴いきっていない」(通信業界関係者)とも指摘される。井伊氏自身も、「具体的な成果を結実するステージは次期社長の前田さんに託したい」と説明した。

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