星野源を語る2つの文章に見える冷静と情熱の間 「読むラジオ」と見立てAMとFMを使い分けよう

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読む人によっては攻撃的で下品だと思われるかもしれませんが、これが私が最も感情の乗る文章表現なのです。「AMの文章」にルールはありません。自分にとって一番自由に書ける言い回し、いや「書き回し」を見つけていく。 感覚としては、鳥が大空を飛んでいるようなイメージです。そのとき感じた想いを脳からそのまま直接指に投影する。これを「情熱:10 冷静:0」としましょう。

コースを走るレーシングカーのような「FMの文章」

対して、ブログではなくライターの仕事として文章を書くのであれば「情熱:6 冷静:4」と情熱の部分を少しだけ薄めます。

ウェブメディア「クイック・ジャパン ウェブ」の連載で星野源がテレビ番組『あちこちオードリー』に出演した回について書かせていただいた記事を一部抜粋します。

「ずっと主軸をやってきた人間というよりかは、主軸じゃないんだなっていうのを自覚している人間で。自分が思っているものを主軸にしていきたいって感覚をずっと持っているので、最初のころはそういうのに気づいてくれる先輩がたまにいて、褒めてくださったりするんですけど、だんだん自分のやってることが主軸になってくるにつれ、なんか普通……なんか『星野源って当たり前にポップな人だよね』って思われてて、違うんだよなぁって思ってて、それがだんだん褒められなくなってくる、当たり前になってるって感じはありますね」
サラッと言っていたが、言葉どおり星野源が「自分の音楽を主軸にした」ことのすごさに改めて身震いした。おそらくほとんどの人は星野源の音楽を聴いて「マニアックだな〜」とは思わない。それほど自然に星野源はポップの中にマニアックさを両立させている。
大衆が「わかりやすい! ポップだ!」と思って摂取している星野源の音楽の中には数滴、アンダーグラウンドでマニアックなドロドロの汁が混ざっている。毎晩食べている夕食に少量の薬物が混ざっていて、少しずつ中毒になっていくような恐怖と気持ちよさ。そうなってしまうともう、星野源からは逃げられない。(①)心境の変化はあれど(②)、星野源の作る音楽の「根」の部分はいい意味で変わっていない。そのなかで時代が星野源に追いついた、いや星野源が時代を動かしたと言えるのではないだろうか(③)。
そんな星野源が『あちこちオードリー』という番組に出るのは、今となっては必然のようにも思える。2012年にリリースした楽曲「フィルム」の中に「笑顔のようで 色々あるなこの世は」という歌詞があるが、『あちこちオードリー』の番組に恐ろしいほど当てはまるフレーズだ。
次ページ文字通り奇跡の回だった
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