すると日常、子どもには「指示・命令・脅迫・説得」ではなく、自然と「自己肯定感を高める言葉」を使うようになります。
親子関係で最も大切なことの一つとして、「子どもの成長は親の犠牲によって成り立っているわけではない」ということです。「あなたのために私は頑張っているのよ‼」と言葉にしないまでも、そのような雰囲気を出されたとしたら、子どもは大きな心理的負担を感じます。
かつて、東大生をゲストに招いて、母親対象のカフェスタイル勉強会「Mama Café」を行っていたときのことです。筆者が学生に「どのような親に育てられましたか?」と毎回変わるゲストに聞いていましたが、そのとき何人からも同じような回答が返ってきたので参加者一同驚いていました。その回答とは次のようなことです。
「普通の親です。父はサラリーマンで、母は専業主婦(もしくはフルタイム会社員)です。そういえば、両親が楽しむ所によく連れて行かれましたね」
両親が楽しむ所とは、例えば登山やスポーツなどが例としてあがっていました。ただ連れて行かれたのではなく、「親の楽しむ所」というのが重要なキーワードです。親としては特に自分の楽しんでいる姿を見せようと思っていたわけではないと思いますが、結果として子どもは「親の楽しむ姿を見て育ち、それが印象に残っている」という共通点があったのです。公立トップ校に合格する子の親も、自分の人生と子どもの人生を分けて考える傾向があり、自分の犠牲によって子どもを育てるという発想はありませんでした。
人として大切なことを重視
公立トップ校、上位校に合格した子の親御さんと面談していると、トップ校に進学してほしいという欲がないことに気づかされます。それよりも、「人の迷惑にならないように」「自分らしい生き方をしてほしい」という、道徳的、倫理的な話が出てきます。
「勉強ができる子だから、そのような考え方になるのでは?」と思うかもしれませんが、そうではないと思えるエピソードがあります。
良かった成績が落ちていった子で後に公立トップ校に合格したケースです。そのようなときに面談すると親は心配になり、勉強についてあれこれと話が出てくることが一般的ですが、成績のことはいっさい、意に介さず、「勉強のことは、子どもに任せているので……」「自分で乗り越えていかないといけないので……」という雰囲気です。勉強を心配している素振りはありません。点数を取ること、成績を上げること以上に、人として大切なことを重視していることがうかがえます。
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