「突き抜けた目標」を持つからこそ見える境地 世界が注目する「内視鏡AI」創業者の行動哲学

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そこで今、注目を浴びている技術が「内視鏡画像診断支援AI」です。内視鏡専門医でも診断が困難な胃がんの画像を大量にAIに学ばせると、AIが胃がんかどうか判別してくれるのです。

私はこの内視鏡画像診断支援AIの研究開発に特化したスタートアップ企業「AIメディカルサービス」を2017年に設立しました。設立からわずか5年で、内視鏡AIの研究開発の医学論文では世界1位の被引用数を誇るようになりました(2022年11月時点)。内視鏡AIの研究開発では世界のトップランナーです。

それとともに、すでに130億円以上の資金を集めており、研究開発したテクノロジーを、日本のみならず世界の内視鏡医療現場に社会実装しようとしています。

普通の開業医がスタートアップ!?

私はこの会社を設立するまで10年以上にわたり、埼玉県さいたま市にある胃腸科肛門科クリニックの院長として、診療と内視鏡検査に明け暮れる日々を送っていました。

内視鏡検査の技術は発達し、今や、1㎝までの大腸ポリープであれば、日帰りで、かつ合併症ほぼゼロで切除する内視鏡手術が可能になっています。

撮影画像も、ハイビジョン、フルハイビジョン、2K、4K……と高画質化し、きれいになってきました。とはいえ、診断するのは医師です。いかに画像がきれいでも、最後は医師の画像診断能力に完全に依存しているという現実に、問題意識を持ち続けていました。

そんな2016年のある日、私は東京大学の松尾豊教授のAIについての講演を聞く機会に恵まれます。「AIの画像認識能力が、ディープラーニング(深層学習)という技術により人間の能力を超えた」。そう聞いて、激しい衝撃を受けました。

内視鏡検査はまさに画像認識そのものですから、これにAIを組み合わせたら、医療が間違いなく発展するだろう――そう確信しました。
「内視鏡画像×AI」というアイデアは、誰でも思いつくことです。

しかし、調べてみると、医療分野でディープラーニングを用いたAIの活用例はまだ2つしかありませんでした。

次ページ初めから「世界最高水準」を目指していた 
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