ただし、この案について、最も気を付けるべきは、前述したように、保険料拠出期間を5年間延長するのに伴い、基礎年金給付に必要な税財源を5年分別途確保しなければならないということである。拠出期間を延長して年金保険料さえ払ってもらえれば、それで完了、というわけではない。
基礎年金給付の財源は2分の1が税財源(国庫負担)であることから、その税財源をどう確保するかまでも含めて、しっかりと制度設計しなければならない。つまり、他の歳出を削減して財源が捻出できない限り、追加的な増税が必要だということである。
まずは、国会議員の数を減らすなど、無駄な支出を削るとか、増税の前にすべきことがあるという意見がある。
無駄な支出は削るのは当然である。しかし、それだけでは焼け石に水である。必要な財源はやがて1兆円強となり、桁が違う。
しかも、それを借金で賄って負担を先送りすれば、年金をめぐる給付と負担の世代間格差はますます拡大する。より年配の世代に年金のための財源を負担してもらわなければ、世代間格差は縮小できない。
加えて、保険料拠出期間を延長する限り、対象者にはできる限りその延長期間中に年金保険料を払ってもらわなければならない。保険料拠出期間を延長したにもかかわらず、免除申請者が殺到してしまうと、この措置は形骸化する。
実は延長はお得、もっとお得な「免除」の落とし穴
もちろん、国民保険料の免除制度を否定するものではない。
免除制度は、収入の減少や失業等によって保険料を納めることが経済的に困難な場合の手続きで、所得に応じて保険料が免除される度合いが異なる。所得が低くて全額免除されれば、その期間については、保険料を全額納付した場合の年金額(これを満額と呼ぶ)の2分の1の給付がもらえる。保険料が半額免除されれば、満額の8分の6もらえる。
このように、財源の半分となる保険料部分で、払った割合に応じて年金が支給されるとともに、もう半分の税金部分は保険料を払わずとも給付がもらえるという仕組みとなっている。
現時点では、保険料拠出期間が延長されると、追加負担があるとして反対する声が出てはいるが、保険料免除制度を使えば保険料を払わずとも給付がもらえて「お得」という声はほぼない。
しかし、それを強調すれば、モラルハザードを助長する。やはり、
おまけに、保険料拠出期間の延長に伴う税財源の確保が、増税反対の声に押されてままならない状態になれば、年金財政を悪化させかねない。財源確保なき年金改革はありえない。
国民の納得を得ながら、老後の所得保障をしっかりと行ってゆくことが重要である。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら