「死にいたる事も」意外と知らない歯周病の"怖さ" なぜ歯周病菌は普通の歯磨きでは死なないのか

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普段、意識することはありませんが、骨は、常に壊れては生み出される、破壊と生成を繰り返しています。

骨を破壊するのが破骨細胞、骨を生成するのが骨芽細胞で、この2つの細胞がバランス良く働くことで、骨は現状の形を維持するのですが、炎症が長期化すると、破骨細胞の働きが強くなってしまいます。

歯周炎が起きると、マクロファージという悪い菌を食べる役割を持つ免疫細胞が出現しますが、彼らは、場所によってさまざまな形態に変化します。歯は、歯槽骨という骨によって支えられていますが、この近くにいるマクロファージは、破骨細胞へ変わってしまうのです。

歯周病は自覚症状がなく、歯周ポケットにアプローチする歯磨きをしなければ、歯周病菌を追い出すこともできません。

そのため、炎症は何十年も続き、その間、破骨細胞は歯槽骨を破壊し続けます。そして、とうとう歯が抜け落ちていくのですが、ここでようやく歯周病の自覚症状が表れます。

歯周病の後期にあたるこの段階では、食事のたびに歯の動揺による激しい痛みを感じる人も少なくないです。

残念なことに、この段階まで到達してしまっては、もはや手遅れ。破骨細胞によって壊された骨が再生することはないので、歯科医院に行っても、入れ歯を作るしかありません。しかも、骨が残されてないので、ぴったりと合う入れ歯を作ることができず、すぐに、外れてしまうような入れ歯になってしまうのです。 

しかし、ここで終わりではありません。体のさまざまな場所で歯周病菌は害を撒き散らしているのです。

歯周病から始まる悲劇の連鎖

歯周病の影響は口内だけでなく、体にも表れ始めます。まず、歯周病により引き起こされる代表的な病気が、糖尿病です。

本来であれば炎症が起きると、その場所に免疫細胞が集まり、入り込んだ敵と戦い菌を倒していきますが、相手は最強の歯周病菌であるため、なかなか倒すことができずに歯茎の炎症は慢性化します。

炎症では、マクロファージなどから生まれる「炎症性サイトカイン」という物質が放出されます。サイトカインは細胞に情報を伝達する「情報伝達物質」と呼ばれ、多くの炎症性サイトカインは、免疫細胞を活性化させる情報を送ります。

このように体内にとって非常に重要な役割を担っているものですが、薬も飲みすぎれば毒になるように、炎症性サイトカインも歯周病菌によって慢性的に放出され続けると、体にとって毒となります。

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