日本企業が「大企業病」を脱するための処方箋 巨大企業「日立」の壁はとてつもなく高かった

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その一例が、ビジネスユニット(BU)制の導入です。日立は川村改革の下でカンパニー制を導入し、一定の効果を上げていました。ただ、導入して5年も経つと、新たな課題も浮上していました。業績は一定の水準に達したけれど、そこからもう一段高いレベルの成長を遂げるには、何かが足りないのです。

ご存じの通り、カンパニー制では、各カンパニーに社長がいて権限と責任は明確化されています。強い権限が与えられる代わりに、期待される業績を上げることができなければ交代させられます。そのため、本社の社長には社内カンパニーのトップの人事権はあっても、経営の実装には口出ししないのが原則です。

もちろん、すべてお任せというわけではありません。四半期ごとにそれまでの売り上げや利益の達成度と、年度内の達成見通しの報告を受けます。その報告をもとに、会社全体の業績見通しを修正して公表します。それによってまた株価は変動します。

社長になってわかったことですが、上期まではどの社内カンパニーも「年度内の目標は達成可能である」との見通しを報告してきます。株価も堅調に推移します。ところが、年の瀬が近づき、第3四半期も終わろうかというころになるとがぜん雲行きが怪しくなってきます。

「実は……」

目標予算の達成が難しくなってきました、という報告が目に見えて増えてくるのです。

これを「実は物語」と呼んでいました。

甘えの構造が残っていた

また、日立はなんと言っても巨大企業ですので、社内カンパニーは、どこも多くの事業を抱えていました。各カンパニーは、カンパニー全体としての売上や利益率などで評価していましたから、カンパニーの社長としては当然、高収益の事業に注力します。それはいいとして、問題は、不採算事業や利益率の低い事業のほうです。

部門の担当者はもちろん、「今期こそ黒字転換します」「採算は上向きます」と、業績を改善する計画を立ててきます。

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