日本企業が「大企業病」を脱するための処方箋 巨大企業「日立」の壁はとてつもなく高かった
私が日立の執行役社長に就任したのは2014年4月です。2016年4月からは執行役社長兼CEO(最高経営責任者)となり、以来、2022年3月までの6年間、日立の舵取りを任されてきました。
経営のバトンを受け取った私のミッションは、川村さんが敷いた経営改革の路線を引き継ぎ、営業利益率の高い「稼げる会社」にすること。そして、中西さんが注力した、モノ(製品)を売るビジネスからコト(サービス)を売る社会イノベーション事業への転換を加速させ、その分野で世界に伍していける「グローバル企業への成長」。この2つでした。
再びの経営危機もありえた
社長就任時、日立は経営改革によって一時の経営危機からは完全に立ち直っていました。が、改革は道半ばで、経営はまだまだ盤石とは言えない状況でした。年間売り上げは9兆~10兆円規模を維持する一方で、営業利益率は6%ほどであり、その利益の多くはグループの上場子会社に支えられていました。社内には業績回復の見込みが薄い不採算事業や低収益事業も多く残っていました。
そのような状況では、リーマンショックのような不測の事態が起これば、業績が下降線をたどり、再び経営危機に見舞われるようなことになってもおかしくありません。私に与えられた使命は、V字回復を盤石にし、天災や紛争といったどんな危機に見舞われようと微動だにしない成長企業に育て上げることでした。
日立が経営危機に陥った遠因は「大企業病」にあったと思います。大企業的体質にはいろいろな側面があり、話し出せばきりがありませんが、たとえば、保守的で改革を好まず先延ばしにする事なかれ主義、失点の少ない人が出世しやすい官僚的体質、自分が担当する事業部門で赤字を出しても他部門が助けてくれるという甘えの構造などです。私がすべきことは、日立という巨大企業の中にいくつも立ちはだかっていた「壁」をたたき壊す作業であったと思います。
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