映えない「ディストピア飯」地味に人気の続くワケ 人々が食いつく背景には何があるのか

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「一番売れているものが、一番製品としての質が高くおいしい」という価値観の時代が来なければ、その価値観を批判して次の時代が来ない。食の世界も飽和するのではないか、と三原氏は考えポストモダン食としてディストピア飯の投稿を始めた。

三原氏が指摘する通り、食のトレンドも近年は飽和気味で、外食・中食・家庭料理のレシピの世界、いずれも煮詰まっている感がある。グルメブームと言われて40年。飽和しないほうがおかしい。

一方で、ディストピア飯がコンビニで揃う社会は、すでにSF的未来が到来しているとも言える。三原氏が提供した料理を参加者が完食するのも、まずくないからだ。

グルメすぎる時代をリセット?

ディストピア飯の投稿者たちは、あえて映えない食事の画像を投稿することで、もしかすると無意識のうちに、グルメすぎる時代をリセットする食のポストモダンを実践しているのかもしれない。

最初の投稿があった2017年は、日本でもSDGsの言葉が広まり、食糧難時代を予見する報道が増える時代と重なる。今は代替肉としての大豆ミートなども広がってきている。

食糧危機に襲われたニューヨークを描いた映画『ソイレント・グリーン』へのオマージュとして、2014年にアメリカで発売された「ソイレント」など、完全栄養食をうたう商品もある。ディストピア飯が現実となりうる時代は、始まっているとも言える。いや、原料や製造工程がわからない食は、すでに私たちの日常だ。ディストピア飯は、ふだん見ないようにしている食の現実への批判でもある。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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