映えない「ディストピア飯」地味に人気の続くワケ 人々が食いつく背景には何があるのか

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もともとSF好きという三原氏は、SF映画の描き方も、管理社会のユートピア型と、荒廃した未来のポスト・アポカリプス型に分けられると分析する。前者の代表が、先の2作のほか、全体主義体制で自我に目覚めた主人公を描く1984年公開の『1984』など。

後者の代表が、人口爆発による食糧不足で食事が配給制になった社会を描く1973年公開の『ソイレント・グリーン』や、大国の対戦で荒廃した社会を描く1981年公開の『マッドマックス2』。

「ユートピア型では、有無も言わさず食事が淡々と与えられる。何が使われているか、映画を見てもわからない場合が多いです。一方、ポスト・アポカリプス型では、資源がないことを表現するために、何を食べているかわかる作品が多い。『マッドマックス2』では、ドッグフードの缶詰を食べるシーンがあります。新たに食糧を自給できないので、文明時代のものを発掘する」(三原氏)

管理社会への嫌悪と規則的生活への憧憬

三原氏は冒頭の展覧会の後、2023年秋にも湘南の海岸で、ランチボックス型のディストピア飯を提供する1日だけの展覧会を開いた。その際も、15人の参加者は喜んで食べたが、このときも中身を当てる人はいなかった。

(写真:三原氏提供)

「僕自身は管理社会に嫌悪感を覚えますが、同時に、自分が規則的な生活ができないゆえの憧憬もあることを、否定できません。僕のように、自己矛盾的な気持ちを抱える人たちがいることを考えると、全体主義的な管理社会が生まれる可能性もあるのではないでしょうか」と三原氏は作品に込めた思いを語る。

三原氏によるディストピア飯のシリーズは、投稿し始めた2019年は、実験的な意味合いが強かった。というのは、食の世界では、他のジャンルのようにポストモダンの時代が到来していないと考えたからだ。

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