「2023年3月期 決算説明会資料」では、「KFCアプリ 2600万ダウンロード達成」との文字があり、「アプリとネットオーダーの連携」は同社としても重要施策のようだが、今回は紛れもない「改悪」になったと言ってよさそうだ。
なお、これから書くのはKFCの話ではなく、一般論だ。これまでタッグを組んだシステムベンダー、アプリサプライヤーを変更するときには、さまざまな目論見がある。
もちろん、コスト、デザイン、インターフェース、独創的なアイデア、保守や管理のやりやすさ……のようなものに加え、役員人事や組織の改変によって、ITベンダーを変更することで「新しさ」を出したい目論見もある。
少なくとも、アプリの使いやすさは注文や訴求性に直結するので、KFCの操作性向上を望みたい。
KFCの次なる課題
なお、全社の業績としては2023年度も順調な向上を見込んでいる。前節で売上推移をあげたが、営業利益(前期比+57.4%)、経常利益(前期比+33.5%)ともに2桁%増加だ。
これは2023年4月から2024年3月までを指すため、さきほど紹介したアプリの不具合は範囲に入っていない。そこで、さきほど説明したアプリの向上は繰り返さないが、その他にもいくつかの課題が待ち構えている。
・現時点でも日本ではまだ実質賃金がマイナスのまま続いている。これまでKFCは強気の値上げを重ねてきたものの、消費者は節約志向をむしろ強めている。このなかで消費者に訴求性を保ち続けることができるか
・原材料・エネルギーや食品の価格が読めない、あるいは高止まりのなかで、これ以上の価格転嫁ができるか。また地政学的なリスクによって物流の停滞やさらにコストの上昇がありえる。さらに昨今では国内で人手不足が続いている
・チキンフィレの特別商品やクリスマスなどハレの日へのご褒美としてこれまで需要を創出してきた。しかし、他のイベントも復活するなかで、どれだけ需要を創出し続けられるか
もちろん、その他、健康志向の高まりのなかでファストフードチェーンとしてどのように対応していくか、などさまざまな課題を提示することはできるだろう。
KFCは、コロナ禍以降のファストフード店の行方を占い、さらにDX(アプリによる顧客体験)をいかにオペレーションしていかねばならないかを象徴しているように思われるのだ。
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