もしかしてコロナ? あるいはやけどの悪化か? 不安を感じた山田さんは、とにもかくにもと発熱外来のあるクリニックを探し、電話をかけまくった。ところが、どのクリニックも「うちでは診れません」と断られてしまう。
コロナ禍では発熱患者を診てくれる医療機関は、限られていたことは記憶に新しい。「『発熱外来の看板を掲げているのに、熱のある患者を断るとは、何やねん!』と腹が立ちました」(山田さん)
思案した結果、持病のアトピー性皮膚炎を診てもらっている皮膚科のかかりつけ医に相談することを思いついた。電話をすると、「受診OK」とのことで、30分かけて電車を乗り継ぎ、クリニックにたどりついた。
「隔離室のような診察室で待っていると、主治医がマスクに手袋、ガウンにフェイスシールドといった完全防備で、入ってきました。物々しい雰囲気でしたね。腕を見せた瞬間、『蜂窩織炎(ほうかしきえん)だね』と。秒殺でした」(山田さん)
蜂窩織炎。なんとも難しい名前だが、細菌による感染症の一種(詳しくは後述)だ。
山田さんは抗菌薬を飲み、安静にするように指示された。帰宅する頃には熱は39度にまで上がっていた。腕は大きく膨れ上がり、動かしにくくなっていた。
それでも薬が効いたようで、その日のうちに熱は下がり、2日ほどで皮膚症状も回復。ただ、関節痛やリンパ節の腫れはしばらく続いたという。
「あとで調べたら、蜂窩織炎は重症化すると敗血症になり、手足を切断することもある怖い病気だと知りました。早く受診して本当によかったと思います」
山田さんはそう話し、蜂窩織炎になりやすい人として、「体力や免疫力の低下」と書かれていたことについても、こんなふうに振り返る。
「コロナ禍による制限で、運動もあまりしていなかった。外出制限のストレスもあり、免疫力が低下していたのかもしれません。これをきっかけに無理をせずに暮らすことを心がけるようになりました」
ただし、「蜂窩織炎の“直接の原因”はサウナではなかった」こともあり、サウナ通いは今も続いている。「サウナに行った後はしっかり、肌を保湿するよう努めています。おかげさまで蜂窩織炎を含む、皮膚のトラブルとは無縁です」(山田さん)。
総合診療医・菊池医師の見解は?
総合診療医で、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師によれば、「アトピー性皮膚炎がある人では、そうでない人に比べ蜂窩織炎になりやすいことが知られている」と言う。
「蜂窩織炎は皮膚や組織に細菌が感染し、増殖して急性の炎症が起こる病気。アトピー性皮膚炎や乾燥肌、皮膚に傷があると、細菌が皮膚のバリアを通り抜け、細菌が入り込みやすくなるため発症しやすいのです」(菊池医師)