「君たちはどう生きるか」中国で特大ヒットの裏側 日本と宣伝手法一変、「宮崎駿最後の作品」強調

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中国では2023年4月も『すずめの戸締まり』と『スラムダンク』の日本アニメ映画2作品が大ヒットし、いずれも日本作品の興行収入記録を塗り替えた。

『すずめの戸締まり』『スラムダンク』は日本での勢いが中国でも再現された。興行収入を比較すると、『すずめの戸締まり』は日本が147億9000万円、中国が8億元超(約160億円)。『スラムダンク』は日本が157億円、中国は6億5900万元(約132億円)だった。(過去記事:「スラムダンク」中国人がこんなにも熱狂する背景

『君たちはどう生きるか』は様相が異なる。日本で2023年7月14日に公開された同作品は、4日間で興行収入が21億4000万円を突破し好調なスタートを切ったものの、興行通信社によると2024年4月7日現在で93億円と100億円に届いていない。

全体から見ればヒットしているし、「第96回アカデミー賞」の長編アニメーション映画部門賞を受賞した2024年3月中旬には再び話題となったが、「宮崎駿監督10年ぶりの新作」としては物足りない数字に見える。

中国人を引き付けている理由

伸び悩んでいる最大の理由は内容の難解さだと言われている。にもかかわらず中国では、公開後5日間の興行収入で、あれだけ話題になったスラムダンクをも上回っている。何が中国人をそれほど引き付けているのだろうか。

まず挙げられるのは、宮崎監督とスタジオジブリ作品の圧倒的なブランド力だろう。

近年は中国の映画市場の大きさが認識され、日本のアニメ映画の多くが続々と輸出されるようになった。『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』を手掛けた新海誠監督は新作公開前に毎回中国を訪れてファンと交流するなど、中国での宣伝に力を入れている。

一方、10年ほど前までは中国国内における外国映画上映本数の制限が厳しく、ジブリの映画はほとんど公開されなかった。中国で最初に上映されたジブリ作品は日本より4年遅れの1990年に上陸した『天空の城ラピュタ』だ。『となりのトトロ』は日本公開から30年後の2018年、『千と千尋の神隠し』は18年後の2019年に正式上映がかなった。

正規のルートでは上陸できなかったが、中国人の多くは2000年代からネットや海賊版を通じてジブリ作品に触れるようになり、宮崎監督のことをアニメ映画の礎を築いた第一人者と認知している。

新海監督のファン層は10代後半から20代のZ世代が中心だが、活動期間の長い宮崎監督はより広い世代に支持されている。

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