再生エネルギーは本当に使えるのか
一方、既存電源と比べると、再生可能エネルギー発電コストは明らかに高い。「太陽光発電のコストはここ数年で劇的に低下してきた」(新エネルギー・産業技術総合開発機構の諸住哲・主任研究員)という流れはある。だが、電力会社はFIT導入による買い取りで増えた費用をカバーするため、電力料金を値上げする。一般家庭向けだけでなく、大口需要家の企業向けでも値上げされることになりそうなだけに、経団連は法案に反対の姿勢を見せている。
当面は、FITによる買い取りが増えれば増えるほど、電力料金は上がっていくことが予想される。この値上げに対して、一般国民は脱原発・再生可能エネルギー普及のためにはやむをえないと思うのかどうか。
長期エネルギー政策で原発はどうするのか
10年度のエネルギー基本計画では再生可能エネルギーの比率を30年までに20%まで引き上げる(原子力比率は約50%)としていたが、4月のサミットで菅直人首相は、比率をそのままに20年へ計画を10年前倒しすると発言した。一方、原子力比率については何も触れなかった。
しかし、7月の記者会見で将来的には原子力依存を下げていく「脱原発」を宣言した。退陣を表明しながら居座る菅首相。「辞める人が脱原発や再生可能エネルギーについて思いを語っても白けるだけ」と民主党内からも批判の声は上がっている。だが、日本の長期的なエネルギー政策については、福島原発事故以降、実質的に白紙状態が続いている。
日本の経済や社会、国民生活を根底から支えるエネルギーについて、何も議論のないまま、首相が勝手に発言することは問題だが、国家のエネルギー政策が決まっていないのに、再生可能エネルギー特措法案の審議が先行して行われている。