再燃する医療費問題、社会保障と税の「一体改革」が大迷走
数年前まで、日医など医療関係者は、「医療費抑制の撤廃を求める一方、消費税増税には反対。財源は霞が関埋蔵金や無駄な歳出排除で捻出できる」というスタンスだった。
しかし今では、医療など社会保障を維持するために増税支持の方向に転換している。医療費と国民負担率の関係、さらに言えば日本におけるそれらの比率が海外の先進国と比していかにひずんでいるかの認識が定着してきたことが背景にある。
言うまでもなく、日本の高齢化率(65歳以上人口の全人口に占める割合)は世界一(08年で22%)だ。高齢者の1人当たり医療費が他の世代より高いこと(日本では、65歳以上の1人当たり医療費が65歳未満の約4倍)を考えると、日本の医療費支出の水準は先進国で最も高くなっていてもおかしくはない。
国ごとの医療費水準を計る代表的な物差しは、国内総生産(GDP)に占める医療費の割合だ。これは、国内の経済活動を通じて生み出される生産物(サービスを含む)の中で医療が何割を占めるかを表す値である。高齢者の人口比率が高い先進国であれば、国内生産・サービスのアウトプットに占める医療の割合は自然に高くなる傾向にある。
ところが、日本の公的医療費の対GDP比は6・9%。欧州主要国より約2%(金額ベースで約10兆円)少なく、圧倒的に日本より人口構成の若い米国(8・3%)と比べても低い(表)。国民人口1人当たりの医療費という指標で見ても、日本は欧米主要国を下回っている。