「打ち合わせに遅刻」あまりに残念な謝罪の一言 相手の立場に立ち、何を求めているかを考える

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ただし、これら4つの要素を含まなければ、そのまま問題なく謝罪が受け入れられる、というわけではありません。自身の行いを詫びるだけでは、誠意が伝わる謝罪になりません。そもそも、多くの人は謝罪の言葉を求めているわけではないのです。

アメリカで行われた心理学の実験で、6歳くらいの子どもが、4種類の謝罪の仕方に対してどのように感じるかが調べられました。

実験では、子どもは実験協力者の大人と並んで座り、赤色と青色のカップを交互に積んでタワーを完成させるという課題に取り組みました。タワーの完成が間近になったところで、隣の大人が「うっかり」タワーを倒しました。

このときに、子どもたちはタワーを倒した大人から、次の4種類のいずれかの対応を受けました。

①すぐに「ごめん」と謝る
②実験協力者が促してようやく「ごめん」と謝る
③子どもがやり直すのを手伝う
④何も言わない

これらの対応に対する満足度と許容度を子どもに点数で答えさせたところ③補償の申し出、①自発的な謝罪、②促されての謝罪、④謝罪なしの順で高く評価しましたが、許容可能だったのは③補償の申し出だけで、ほかの3つはどれも低い点数でした。

つまり、「謝ってほしいのではない」のです。「元に戻してほしい」のです。

筆者が行った脳波や心拍を測定した実験では、実験参加者に書いてもらった作文を、別の実験協力者が酷評するコメントを書いて怒らせました。半数の人は怒らせたままで、残りの半数には「こんなことを書いてすみません」と簡単な謝罪をつけました。

そうすると、攻撃性の指標である脳波などは怒りの値を示しませんでしたが、不快感の指標となる皮膚電気活動は上昇しました。

つまり、「すみません」という簡単な謝罪は、怒らせた人の攻撃性を抑えますが、不快感は解消しないのです。簡単な謝罪は、怒っている人ではなく、怒らせた人が攻撃されないためのもの、ということができます。

効果的な謝罪の要素3つ

では、いったいどう謝罪すればよいのでしょうか。前述の子どもの実験では補償が高く評価されましたが、実は補償だけでは十分ではありません。少なくとも、次の3つを含む謝罪が効果的です。

① 後悔
② 責任
③ 補償

後悔は、「こんなことになって申し訳なく思います」という自責の念を示すことです。しかし、「そんなつもりではなかった」と続けて正当化を図っては、元も子もありません。

責任は、「私の不注意のせいです」と、自身に責任があることをはっきり認めることです。

そして、謝られる側がもっとも重視しているにもかかわらず、多くの謝罪に欠けているのが補償です。ここでいう補償とは、何も金銭的な補償に限りません。

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