「打ち合わせに遅刻」あまりに残念な謝罪の一言 相手の立場に立ち、何を求めているかを考える
簡単な謝罪でその場を収めようとするのではなく、関係がギクシャクしたことを機会に、相手が自分に求めていることをよく考える。そして、場合によっては何度も補償や改善の意志を示すことで、むしろこれまで以上に相手から信頼される関係を築くことも可能です。
先に述べたハンバーガーショップの会社は、世間の信頼を大きく失いましたが、のちに顧客が求めていることに耳を傾け(相手の立場に立つ、攻撃と捉えない)、それまでのやり方を変えて(自分が正しいという考えを捨てる)、態度を変える意志があることを示しました(態度を変える意志の表明)。
その結果、顧客や従業員からの信頼を回復したのみならず、新メニューがヒットしたことも相まって、結果的に業績はV字回復を遂げたのです。
「自分をよく見せたい」気持ちがある
誠意が伝わる謝罪をするには、まず自身に非があることを認めなければなりません。ところが、誰しも「自分をよく見せたい」気持ちがあるので、他人を不快にさせてしまった行為を認めることは、「よい人」でありたい自分と一致しません。
こうした自分のなかでの認知のズレを解消するために、正当化や弁解、事態の矮小化を含む謝罪をしてしまうのです。
しかし、ここまで説明してきた適切な謝り方をすれば、謝罪が逆効果になることはありません。なおかつ、こちらが謝らねばならない状況というのは、実は相手の要望を聞き出せる機会とも考えられます。
以上の点を踏まえれば、謝罪の機会を、これまで以上に相手方と良好な関係を築く好機にすることができるでしょう。
日本認知科学会会長。日本学術振興会特別研究員、京都大学霊長類研究所研究員などを経て、名古屋大学大学院情報学研究科 心理・認知科学専攻 教授・中部大学創発学術院 客員教授。文部科学大臣表彰、日本学士院学術奨励賞など多数受賞。著書に『科学の知恵 怒りを鎮める うまく謝る』『ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか』ほか。
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