DeNA南場会長が語る「日本はダイナミズムがない」 DeNA南場会長とハイセンスジャパン李社長対談

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最近は米中関係の影響で中国人が減っていますけども、日本人はYコン(Yコンビネーター)にも入っていないし。日本はとても居心地がいいと言っていただいて、それは日本人にとってもそうで、アメリカの西海岸で起業する人も、アメリカのトップの大学院で学ぶ人も少ないです。

だから出たがらなくなってしまっているのは懸念するところです。もう一世代前はまだハングリーさがあったように思います。

:生活が豊かになると欲求も低下するかもしれない。中国もそうですよ。1990年、2000年代生まれと1970年、1980年代生まれは全然違います。

中国は1980年ごろまでみんな貧乏だったから、家庭の経済状況を改善するために頑張って働いて、給料を多くもらうために競うのが当然でした。

DeNA 南場智子 ハイセンス 李文麗
李文麗(りぶんれい)/1972年生まれ、中国・青島出身。1995年、青島大学電子工学科卒業、Hisense国際有限公司入社。2001年、Hisense USA、2003年、Hisenseオーストラリア、2007年、Hisenseヨーロッパ、2011年、Hisense韓国オフィス、ハイセンスジャパン代表取締役社長・CEOに就任(写真:ハイセンスジャパン提供)

その結果、1990年代に入ると都市部は豊かになってきて、そんな環境で育った今の若者は総じて欲求が強くなく、仕事や出世もほどほどでいいと考える人が増えています。7~8年前に、中国では「仏系青年」という言葉が流行しました。

日本の「草食系」に近い言葉ですね。今は経済が悪くなって、格差も広がって「頑張ってもどうにもならない」という「躺平(寝そべり族)」状態になっていますけど。

日本の課題は30年遅れで中国でも起こる

――南場会長が少子高齢化を懸念されていますが、中国も同じ道をたどっていますね。

:そうですね。日本の課題は30年くらい遅れて中国で起こりますね。中国はまだ定年が60歳で、60歳以上も働くという考えがないんです。80歳になると周りの人が世話してくれないと生活できないイメージです。

De
DeNA南場智子会長と、ハイセンスジャパン李文麗社長(写真:ハイセンスジャパン提供)

そうそう、それで日本のいいところをまた思い出しました。日本に来て一番驚いたのが80、90歳になっても自転車に乗っている人がいたこと。60、70歳で仕事をしているのも普通ですよね。こういった元気な高齢者を見て、頭と体を使い続けるから日本人の寿命が長いのだと納得しました。

私は以前、会社を定年退職したら仕事は終わりだと思っていましたが、今は90歳、いや100歳まで運動と仕事を続けるのが目標です。日本に来ないとそういう気持ちにはならなかったです。

前編:「管理職目指す女性が少ない」日本が直面する現実
浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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