半身マヒの91歳男性、最期の墓参りで見せた"笑顔" 「死ぬ前に、どうしても一度、故郷に帰りたい」

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車いすを降ろし、佐々木看護師と飯田さんの2人で両側から抱え上げ、溝を乗り越えて、墓地に足を踏み入れた。

介護タクシーの車内で会話をする佐々木看護師(右)と奥田さん
介護タクシーの車内で会話をする佐々木看護師(右)と奥田さん(写真は上山浩司さん提供)

車いすを揺らしすぎると乗っている奥田さんの体調にも悪影響が出る。佐々木看護師は、飯田さんと息を合わせながら慎重に歩みを進めた。

途中、何度か泥に足を取られそうになったが、奥田家の墓前まで、無事車いすを移動させることができた。

奥田さんが見せた笑顔

佐々木看護師は、奥田さんの左手に線香の束を握らせ、ライターで火をつけた。その頃には全員が濡れても構わない、という気分になっていた。線香が雨に濡れないように、それぞれが傘を差し掛け、奥田さんの手元を見つめた。

「ありがとう、これで思い残すことなく、東京に帰れます」

お参りを済ませた奥田さんは、にっこりと笑ってそう言った。(後編に続きます)

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末並 俊司 ライター

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すえなみ・しゅんじ / Shunji Suenami

福岡県生まれ。93年日本大学芸術学部を卒業後、テレビ番組制作会社に所属。09年からライターとして活動開始。両親の自宅介護をキッカケに介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)修了。現在、『週刊ポスト』を中心として取材・執筆を行っている。

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