第4回ダイバーシティ経営大賞・パネルディスカッション--受賞企業担当者に聞く経営戦略としてのダイバーシティ
社員の多様なニーズに合わせた制度の改革と実現も重視している点です。古くからいろいろな制度を設けて取り組んでいますが、こうした制度が今の社員のニーズに合ったものかどうかをつねに考え、利用率が高くないものは廃止、あるいはバージョンアップをしてより利用率が高まるような工夫もしています。最近では、働く時間と働く場所の柔軟性を広げていくことに力を入れ、日本IBMでも99年から在宅勤務(e−ワーク)を実施しています。今回の大震災の際には震災の翌週から在宅勤務ができたため、業務を止めることなく乗り切ることができました。
ダイバーシティの推進は、人事部門だけが頑張る、あるいは経営トップだけが掛け声をかけるということではありません。今、IBMでは6つの分野でダイバーシティに取り組んでいますが、ビジネスの責任を持つ役員をリーダーに据え、いろいろな活動を全社的に行っています。また、大きなダイレクションはトップダウンで行いますが、その制度を使いやすいものに直したり、新しい制度を導入するときなどは、社員の代表者の意見を取り入れるボトムアップの声を経営に取り入れます。
IBMでは、ここ数年間、特に2008年にグローバルのオペレーション体制を変えたときに、今までの取り組みを整理して、ダイバーシティ1.0、2.0、3.0と定義をしました。1.0はイコール・オポチュニティで制度を整えていくもの、2.0は各国ごとにダイバーシティでその国の課題を解決していくもの、3.0ではグローバルに活躍する人材を育てていくためのダイバーシティをどのように行うか検討しています。さらにダイバーシティ4.0では、いろいろな人材を登用するということではなく、違いを利用してそれをどのようにして活かしていくかに注力しています。そのため、これから私どもは「ダイバーシティ」と言わずに「インクルージョン」と言っていこうと考えています。