「伝説のエンジニア」が明かすエヌビディアの死角 ラピダスや孫正義氏の半導体戦略はどう見る?

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――ラピダスが誕生した背景でもありますが、日本やアメリカなど各国政府は巨額補助金を支出し、半導体産業の振興に乗り出しています。

補助金のおかげで資金不安が減り、成長する企業もあるだろう。だが同時に、補助金をもらうことばかり考え、進歩しなくなる企業もある。

私はアメリカの複数の議員とCHIPS法(アメリカ国内の半導体産業に関する政策)について議論をした際、「産業全体を振興したいなら、インテルやアップル、TSMCのような大企業におカネを与えるだけではダメだ」と指摘した。新しい技術は、新しい企業が生むのだから。

歴史が教えてくれるのは、政府の産業振興策は役に立つこともあれば、そうでない場合もあるということだ。アメリカは自由貿易協定によって多くの雇用を失ったが、その割に自動車の価格は期待通りに下がりはしなかった。政策の効果は複雑であり、予測不可能だ。

1月27日、ラピダスとテンストレントは共同会見を開催し、開発・製造で協業すると発表した。左がラピダスの小池淳義社長、右がジム・ケラーCEO(編集部撮影)

制裁が中国を強くする

――アメリカは自国産業を振興しつつ、対立する中国には半導体設備の禁輸制裁をしています。この影響は?

実のところ中国にはすでに、オランダのASML(半導体設備最大手)のコピー製品を作れる地場企業が出現しており、目覚ましい業績を叩き出している。

現実としては、制裁は中国が産業における自立性を高めるきっかけになっている。同じようなことは、今まで何度も起こってきた。

――米中対立という地政学要素が世界の半導体投資を加速させています。地政学要素は企業家にとってリスクですか、好機ですか。

今、半導体への投資が活気を帯びているのは、技術の進歩と需要があるからで、地政学的対立は一つの要素にすぎない。もしある国が自国に優れた半導体企業を望むなら、補助金と制裁だけでは不十分だ。起業しやすい制度があり、新興企業に投資する有力なベンチャーキャピタルがあること。そういった複数の要素があってこそのことだ。

杉本 りうこ フリージャーナリスト

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すぎもと りうこ / Ryuko Sugimoto

兵庫県神戸市出身。北海道新聞社記者を経て中国に留学。その後、東洋経済新報社、ダイヤモンド社、NewsPicksを経て2023年12月に独立。

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